冒険者パーティを脱退したいのに何故かみんな俺をやめさせてくれない

赤倉伊月

第1話 プロローグ

 賑わう宴、どこかしくも酒と活気な人達。


 そんな荒くれものやエルフに獣人達が集う場所。冒険者ギルド。

 

 そして

 

 「「Aランク昇格に乾杯!」」


 ジョッキーで重ね合わせ祝福する俺たち。


 「まさか私たち2人だけでAランクまでいくなんて」

 「でも、実際ここまで来れたのがその証拠じゃないかクランリーダー」


 目の前に座っている水色のロングに蒼い瞳、整った顔にちょっと垂れ目でキリッとしている彼女こそ幼馴染で我が『星の旅路コスモスター』のリーダー”メルリス・マクラル”


 っといっても俺たち2人だけだが。

 

 「もう、アルスが勝手にリーダーにしたくせに」


 頬を膨らませそのままジョッキーを飲み干した。中身はリンゴジュースだが。


 「悪かったって。まぁ、リーダーって柄じゃないからさ。いつも面倒をみてくれるメルリスの方が最適だと」

 「……はぁ。まぁ、もう慣れたからいいけど」


 ため息吐きながら言ってるが、なんやかんやリーダーとして上手くやってる。


 そんな冗談交じりにからかってる俺こと”アルス・ベクト”


 「ありがと。ところで幼馴染の最後の頼みなんだが」

 「別にいいけど……最後?どういうことなの?」


 リーダーとしての真面目な声で真剣な表情になった。


 「俺たちさぁ、幼い頃から2人で危険な橋を渡りあったじゃないか」

 

 メルリスは頷き。


 「これから、クランは大きくなる辺り…………俺は今日限りで星の旅路コスモスターを抜ける」


 「……え」


 急にかわいい声でキョトンと首を傾げる幼馴染。


 「どういうこと抜けるって?」

 「そのまんまの意味だ。俺いつもメルリスの足を引っ張ってばっかだし。Aランクになればクエストの難易度も上がり身体が幾つあっても足りん」


 暗い顔で心配する幼馴染。けど俺は話を続き、


 「丁度いい頃合いかと……でも」


 呑気に笑いながらこれまでのことを振り返り。


 「幼い頃、冒険者になりたくて村から出て。俺の我がままに付き合ってくれたメルリスにいつも感謝してるぜ」

 「……尚更今のままでも――」

 「それは無理だ」


 俺は首を横に振り違うと。


 「最近ソロの方が楽だと思ってきた。ほら、一人の方が何かと軽いし」

 

 元気に話す俺に対し暗い顔のまま俯くメルリス。


 「……考える気は」

 「全くない」


 俺の言葉に手で顔を覆い観念したか吐息を吐き出し。


 「分かった。ただし……風邪ひかないで」


 心配しながらメルリスが袋いっぱいに入った金貨を俺に差し出してくれた。


 「今まで貴方と稼いだ分の七割よ。大事に使って」

 「分かった」


 袋を受け取りその場から立ち上がる。


 「なにか困ったことがあればいつでも私を頼って……」


 振り向かず背中越しにいる幼馴染に右手を振りギルドをあとにした。


 「悪いなメルリス…………。有り金全部使わせて貰うぜ!」


 さっきとは違いウキウキな気分である場所に向かった。


 ♦

 

 「みんなぁ!今日は私のためにきてくれて、ありがとう!」


 「「うぉおおおおお!!」」


 人々がいっぱい集まり凄まじいボルテージが会場いっぱいに響いた。


 それもそのはず、なんだって、

 

 「うぉおおおおおおお!ハルモニアたんっ!」


 今をトキメクトップアイドルで俺の推し”ハルモニア・ラランダ”通称『ハルモニアたん』のライブにきていた。


 ピンクの瞳は透き通って、瞳と同じ色の髪はツインテールで結ばれ見る者を引き寄せる。

 年齢は俺の1つ下で小動物みたいな見た目だが、彼女の歌唱力は人も獣人達も関係なく彼女の虜になってしまう。

 

 元々彼女は路上で歌っていたが鳴かず飛ばずで誰にも見てもらえなかった。

 俺は偶然彼女の見掛け、ほぼ毎日のように見にきていた。

 気づけば俺は彼女の虜になっていた。

 

 彼女が人気がでたのは丁度俺たちがBランクに上がったころ。

 そこから彼女は引っ張りだこでチケット手に入れるだけでも朝4時から並んだもんさ。

 それだけ推しの努力と可愛さがみんなに伝わったってことだ。


 そして今日行われてる場所はバルカン王国闘技場。

 バルカン王国はステラ大陸の大都市にして殆どの冒険者がここに集う。

 そしてハルモニアたんのライブ会場の殆どがバルカン王国経由だとの噂が。


 「アルス氏、今日は新たな伝説をこの目で拝めるとは……!」

 「それだけ今日のハルモニアたんは特別なものさ軍曹。そろそろこちらも」


 隣にいる眼鏡かけた小太りしている中年は俺と同じアイドルオタク通称”軍曹”

 そして俺たちはサビがくる寸前、推しの名が書かれたはっぴと鉢巻、そして次々に色が変わる棒型魔道具を3本両手で掴みだした。


 「いっくよ~!」


 「「うぅおおおおおおおおおおお!」」


 サビがきたと同時に俺たちは彼女に負けないぐらい精一杯のオタ芸エールで彼女を応援した。


 曲が終わりハルモニアたんはみんなに手を振り終わるかと思いきや彼女と偶然目が合い、ウインクされた。

 ……絶対俺に向けたものじゃ……ないよね。

 

 ♦

 

 「いや~今日のは神だったねアルス氏!」

 「あぁ、例え同じ歌でも今日歌った熱は断じて違う!」


 ライブ後、俺たちは闘技場外の居酒屋で今日のライブの感想を語った。


 「……ライブ中言えなかったが。アルス氏」


 明るく語ってた軍曹が心配そうな目で俺に問いかけた。


 「本当に星の旅路コスモスターを辞めってしまったの……」


 軍曹は俺に気にかけてくれてる。


 最初こそどっちがファンクラブナンバー1に相応しいかいがみ合ってたが、今はお互いに尊重しあうオタ友どうしに。

 

 だからこそ軍曹には、


 「大丈夫。寧ろAランクなんて俺には不釣り合いだ」

 「けどアルス氏の職業って確か――」

 「おっと俺の職業は盗賊だぜ」


 軍曹が俺の職業を言われる前に割り込む形で答えた。

 軍曹に俺の職業を言った途端他の客達が俺に聞こえないぐらいヒソヒソ話する。


 「おい、盗賊って本当かよ」

 「戦闘に役に立たないスキルばっかで他の冒険者の所持品を盗むんだぜ」

 「挙句の果てに疫病神職なんて言われる始末」


 俺の陰口を言いたい放題。


 そんな軍曹が俺の陰口を許せなかったか立ち上がろうとするが軍曹の手を掴み首を振り落ち着かせた。


 「好きに言わしとけ。もう慣れっこだ」

 「でも……魔力を持たぬ拙者にはどうしても……」


 軍曹は生まれつき魔力がなかった。この世界にも軍曹と同じ魔力がない人間が大勢いる。

 こんな俺のために怒ってくれるだけでもありがたい……。多分軍曹より一番悔しいのはメルリスだ。


 職業が決まった時から周りに馬鹿にされて煙たがれてたがメルリスだけが俺を庇ってくれた。

 だからこそこれ以上メルリスが傷つかない為にも、俺は星の旅路コスモスターを抜けることにした。


 「ままっ、今日は俺のおごりということで切り替えよ!」

 「そんな悪いよ。それにそんな金あるの?」


 俺は懐から金貨が入った巾着袋を取り出しジャラジャラと金がたんまり入ってるアピールした。


 「今日は朝まで飲みま………あれ、なんだか眠く…………」


 突然激しい眠気に襲われ、テーブルに突っ伏し倒れた。


 「どうしたアルス氏!一体なにが!?」


 心配してくれる軍曹をよそに。足音がなぜかこちらに近づいてくる。


 「心配しないで彼は眠っているだけだから」


 軍曹でも他の客の声色じゃない。キリっとしているがなぜか甘くて可愛げな、いつも聞いている声色。

 ここにいる筈のない


 俺の意識はそこで途切れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る