第7話
後悔の二文字をずっと彼が抱えていたことをよく知っている。
あの日、予知夢さえ見ていれば防げたかもしれないのにと自分を罵った。
そうしてまた、望んでいなかった結末になったあの日に、何も見ることが出来なかったと唇を噛む。
「…………それが普通よ。何も見えないの。誰もこの先に何があるか分からないの。誰の行動で、誰の言葉で、誰が変わるかも分からない。それは侵してはならない領域よ。
だから人間には意志があるんじゃない。未来が分かっていたら只の人形。それって誰が操ってるの?少なくともあんたが左右出来るのはあたしが明日作る料理に嫌いなものが入るのを阻止することくらいね」
「…………っ、そう、っスかね………」
情けない声は微かに色を戻した。
眉を下げる啓介が心痛そうながらも、彼女の言葉に口許を緩める。
「………しゃきっとしなさい。妊婦に寄り掛かるんじゃないわよ」
「…………はい………」
口調は咎めるものだったのに、啓介の背に与えられたのは、優しく抱き締める腕だった。
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