クロとシロ プロローグ -笑顔の出会い.3-
それからムツキちゃんはリビングにシイロイさんを案内してシイロイさんのカバンを渡した。
「ありがとうございますのじゃ」
シイロイさんは中身をムツキちゃんに見られないよう注意しつつ、カバンの荷物を確認する。念の為、ムツキちゃんに質問した。
「わしのカバンの中をみましたかのじゃ?」
ムツキちゃんは大きく首を左右に振った
「ううん、見てないよ」
シイロイさんはそれ以上は中身については何も言わずにカバンを閉じた。そして、話題を変えた。
「ムツキ殿の部屋は綺麗じゃのう。わしの部屋とは大違いなのじゃ」
「そうなのかい?」
シイロイさんとムツキちゃんは座ってたわいのない話を始めた。それは楽しくて終わってほしくない時間だった。
「この時間がずっと続けばいいな…」お互いにそう思ったムツキちゃんとシイロイさん。しかし洗濯機のブザーが鳴り、会話の終わりが来てしまった。
ムツキちゃんは洗濯機の蓋を開けて、シイロイさんの服を取り出して洗濯物を乾燥機に入れようとすると…
「大丈夫なのじゃ」
シイロイさんが言って、ムツキちゃんから服を受け取ると、一声発した
「のじゃ!」
シイロイさんの持った服が瞬時に乾いた。
「シロ、凄いよ!」
目を丸くして驚くムツキちゃん。
「八百万の力じゃよ、プラーアとも言うかのう。
プラーアは世界の根源に満ちておるものなのじゃ。どこにでも存在するのじゃ。
そしてプラーアに祝福されてこの地に生まれた者はプラーアの力を借りることができるんよ」
シイロイさんは微笑む。
「普段は他の者の前では使わないが、ムツキ殿からもプラーアの祝福を感じたので使ってみましたのじゃ」
少し驚いたムツキちゃんは少し戸惑った。
「わかるのかい。えーとっ、ボクは…」
言いかけたが、それを制するように、シイロイさんは優しく笑った。
「詮索はしませんのじゃ。友達が誰であろうと関係ないのじゃ」
「うん、ごめんよ。シロ」
ムツキちゃんは少し申し訳無さそうするがシイロイさんは気にしてない顔で言った
そして、何かを思いついたような顔をした
「ムツキ殿、プラーアの力を借りるとこんなこともできるんよ」
シイロイさんは手のひらをムツキちゃんに見せながら念じた
「のじゃ!」
次の瞬間、シイロイさんの手の上には花が現れた。
「プラーアの力を借りて作ったのじゃ」
驚くムツキちゃんにシイロイさんは花を手渡した。
「シロ、すごいね!」
微笑んだムツキちゃんを見てシイロイさんは少し照れながら頬を緩めた
「喜んでもらえて、わしも嬉しいのじゃ」
シイロイさんは乾いた自分の服に着替えた。ムツキちゃんはもう少しお話したい様子だったが、壁にかかった時計を見たシイロイさんは残念そうな顔した。
「ごめんなさいなのじゃ。わしも、もう少しおしゃべりしたかったのじゃ。しかし、この後ちょーと用事があってのう。行かなくてはならんのじゃ」
カバンを大事そうに背負って、玄関へ向かった。そして、丁寧に頭を下げた。
「ありがとうございますのじゃ、ムツキ殿」
「シロ。また、会ってくれるかい?」
ムツキちゃんが少し寂しげな顔をして尋ねると、シイロイさんはにっこり笑う。
「もちろんなのじゃ。わしらは友達じゃからのう。わしもムツキ殿とまた楽しくおしゃべりしたいのじゃ。
遊びにきてもいいかのう?今日のお礼もしたいのじゃ」
シイロイさんの笑顔に、ムツキちゃんは思わず頬を緩めた。
「うん、待ってるよ!」
シイロイさんはムツキちゃんの笑顔を目に焼き付けるように見つめ、そっと玄関の扉を閉めた。お互い「もう一度会いたい」そう思った。
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