一章 なんで浮気するの??
第2話
静寂で満ちる図書室
古い紙にインクの香り、少しだけ埃の匂い
「ん…ふ…っ」
そして図書室に似つかわしくない水の音と湿り気を帯びた声
優しい春の匂いを運ぶ風は酷く心地よりが、その音のせいで、途端に居たたまれない気持ちになるのは至極当然なことといえる。
きっとあの本棚の向こうにいるであろう人たちは「学校の図書室で、なんて…青春っぽい!」みたいな阿保みたいなことでも思っているのだろう。
私はバレないように溜息を吐き出した。
私が今いるのは、
他の高校がどうなのかは知らないが、この図書室はお堅い論文や小説などだけではなく、今流行りの漫画やラノベ、雑誌なんかも取り揃えているような場所だ。
ただ、利用者は少ない。
ネット社会に成り果てた現代では紙より分子書籍のほうを好む人が多く、この通り図書室はいつ来ても人がすくない。
だからだろうか。
カップルの憩いの場になり果てているのは。
「ん…」
上ずったような女の子の声が聞こえて頭が痛くなる。
私は少し背中を逸らして、その本棚の向こうを覗く。
ピンクのピンを付けた女の子と、背の高い男の子がキスをしている現場だった。
男の子の手は女の子の制服の中に入っていて、僅かに動いているのが遠目からでも見える。
もう片方の手は女の子の手を縫い付けるように壁に本棚に押し付ける形で握られていた。
普通の利用者がいるとも知らず、昼休みに盛っている生徒二人
普通に考えて欲しい。ここは一応公共の場だ。
エロ同人においてあるあるの展開だかなんだか知らないが、欲に任せてやらないでくれ。やるなら家でやれ。もしくはホテル行け。
「……は、」
「みな、と…くん…っ」
その阿保の片方は、嘆かわしいことに私の彼氏であった。
この状況。所謂浮気現場という奴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます