第47話

私は一度抑えていたものを口に出してしまったら止まらなくなって、もう全部理央にぶつけてやろうと思った。



目の前で、私のことを愛おしそうに見つめるこの男なら、きっと全部受け止めてくれる。そう思えた。



「理央も私のこと、好きでいてくれてる?私だけを?こうやって、面倒なこと聞く女でも、嫌いにならない?」



理央は堪えきれなくなったみたいにくしゃっと笑って、その顔は、なんだか泣きそうにも見えた。


私をぎゅうっと抱きしめる。いつもの体温と、心地よい理央の香り。



ずっとこの中で守られていたいと、不覚にも、思ってしまった。



「郁ちゃんだけが、本当に、意味分かんないくらい好き。俺のこと考えて不安になってんのも、最低だけど、ちょっと嬉しいと思ってる」



理央が「これ以上その可愛い顔見せたくないから、もう帰ろ」と言って、私たちはようやく地下鉄のホームへ向かった。



理央の存在が薄れてきていた私の部屋を、また彼で満たしたくて、勝手に自分の家に向かった。


部屋に着いてからも理央は私の手を離さないままで、少し決まり悪そうに話始めた。

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