第40話
「いいから。とにかく、相手にちゃんと不安だって伝えること。男は、言わなくても分かってくれてるって思い込んでる生き物なのよ」
「うーん。理央に限って、どうかなあ」
「それを確かめるにも、いい機会でしょ」
みのりに言いくるめられて、私はランチを終えるころには「たしかに、それもそうかも」と返していた。
ちょっとだけ待って、見つけられなかったらすぐに帰ろう。
そう自分に言い聞かせて、とうとう立派な自社ビルの下にある、小綺麗に整備された広場までたどり着いてしまった。
外資系の投資銀行、という響きだけでも自分からは縁遠いのだから、金融系の企業ビルが立ち並ぶエリアの駅で降りるのも初めてだった。
理央は毎日こんなところで働いているのか、と思うと、その姿を見てみたいような、でも自分との違いを見せつけられそうで怖いような、半分半分の気持ちになった。
街路樹のそばにぽつんと立って、次々とビルから出て来る人たちを眺める。
男の人はフォーマルなスーツを着込んで、手首には高級そうな腕時計を付けている。
陽が落ちてすっかり暗くなった都心へ、早足に歩いていく人がほとんどだ。
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