3.Helpless

第23話

出会ったときから、ずっと必死だ。


萩原郁という人には、どうしたって抗いがたい魅力が備わっている。


そして、それに惹きつけられるのは自分だけではないことも分かっている。


郁ちゃんの魅了の魔法の前では、俺はただのつまらない人間だ。いつだって、負けを認めている。


だからこそ、必死になって自分のものにした。



俺に髪を撫でられて笑う郁ちゃんを繋ぎとめて、それができるだけ長く続くように、いや、永遠に続くようにするためなら、どんなことでもできる。そう本気で思っている。



それなのに、その内面も、才能も、容姿も、知れば知るほど落とされて行くのは俺の方で、彼女は今にも遠くへ飛び立ってしまいそうな軽やかさで、今日もふわりと微笑んでいる。


もうこれは執着というか、中毒のようなものだとさえ思っている。



恋とか愛なんて感情は、どう考えても、救いようがない。





「あの、大丈夫ですか?よかったらお水、飲んでください。今、そこで買ってきたものなので」



いちばん初めにいいなと思ったのは、声だった。


それから、視界に入ってきた華奢な手も、清潔感があって好ましかった。

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