第17話

「いえ、そういう意味ではなく…」


「まあ、ちょっと点数稼ぎたいな、とは思ってるけど」



彼は本当に直球の人らしい。


私は、ただ送るだけって言われてるのに頑なに断るのも自意識過剰かな、いやでも、そもそもこの人と今日知り合ったばっかりだしな、と次に続けるべき言葉をぐるぐる考えながら、改札へと向かう階段を上がる。



その間もしっかりと横峯さんは私の隣を並んで歩いていて、その事実が私にとっては違和感でしかなかった。



「あの、ごめんなさい、本当に大丈夫なので。もう改札出ちゃいますし。ありがとうございました」


「あ、ちょっと待って」


「お疲れ様です、おやすみなさい」


早口でそれだけ言って軽く頭を下げてから、ほとんど走るようにして改札を抜ける。



なおも私を引き留めようとしていたのか、横峯さんがこちらに手を伸ばしているところまでは、はっきり見えた。




これは言い訳だけど、やっぱり今夜の私は酔っていた。



だって、普段だったらもう少しまともな解散の仕方ができるし、改札の外で佇んでいた男の存在に気が付かないはずがない。

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