第77話
私は下校時間を過ぎてまで残って作業して、見回りに来たらしい幸坂先生の仕事を増やしてしまったから先生は怒っているのかと思ったけれど、どうやらそうではないみたいだ。
「いいよ。そんなの、どうでもいい。ただ、お前がそんな泣きそうな顔してまで、一人でやるべきことだとは思わないけど。」
真っ直ぐに私を射抜く瞳に、心の奥まで見透かされてしまいそうだ。
私はこの人の前で、うまく笑顔を作ることが出来るだろうか。
自信はなかったけれど、幸坂先生に弱い私を知られたくなかった。
先生の世界を素敵にする、なんて偉そうなことを言っておいて、自分自身のことで精一杯なところを見せてがっかりされたくなかった。
「やだなあ、幸坂先生。泣いてなんていませんよ。一人でやってたのも、本当に偶然です。」
この重い空気を断ち切るようにそう言った私に、幸坂先生は小さくため息を吐いた。
それから乱暴に私の頭をくしゃくしゃ、と撫でた。
私の肩の下で、栗色の髪のカールした毛先が揺れる。
「何があったのかは知らねえけど、篠宮がそうやって暗い顔してると、なんとかしてやりたいって思うよ。俺じゃ、頼りにならない?」
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