第5話

電車の彼は夏が終わろうとしても相変わらず、車内の喧騒なんて無関係のように静かに読書をして過ごしている。

最近少し変わったことといえば、読書をするより寝ている日が多くなったことだ。





そして、もう一つ変わったこと。

それは生徒にも大人気で、葉月も密かに好きだった高橋先生が夏休み中に学校を辞めたことが分かった。

理由は家の事情だということだったので詳しくは知らない。




「あ〜ん、高橋先生なんで辞めちゃったのよ〜」



「ね、本気で泣いてる生徒結構いるよね」



「私だってさ……あー、もう失恋したっ!私の高校生活は終わったわ」



「大げさだな〜」



「えっ、西沢にしざわフラれたの?じゃあさ、俺と付き合う?」



「いや!」



「フラれたっ!」





葉月はモテるのにやっぱり同級生には興味がないみたいだ。





そして、10月。

学校では文化祭が行われた。

クラスの仲も深まり、打ち上げと称してそのままみんなでカラオケに行くことになった。

広い部屋で気になる人の隣に座り、文化祭で少し疲れていた私はいつの間にかウトウトして気がついたら隣に座っていた青山くんの肩に凭れかかっていた。





ハッと気づいて、起き上がると周りは騒いでいて誰も私の行動に気がついていないようだった。





「ごめんっ!重かったでしょ!?」



「いや、全然。水木みずきさんはだいぶ疲れてたみたいだな」



「青山くんは?疲れてない?大丈夫?」



「大丈夫、疲れてないから」





今まで青山くんとこんな風に話したことはないけど、なんだか昔から知っているかのように青山くんと話が弾んだ。

青山くんは同じ歳とは思えないほど落ち着いているからかもしれない。





それから私達は狭いカラオケの部屋で触れてしまうくらいの距離で並んで座り会話を続けた。

そして、クラスメイトが騒いでいる様子や歌っているのを傍観していた。




たったそれだけの事だけど、私はドキドキしていた。

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