第1章 小学生編

第1話 回帰


「んあ…」


(あれ…ここは…?病院?俺は助かったのか…?)


最後の記憶では少年を突き飛ばし、目の前にはトラック—。


(あの衝撃で助かるハズがない…。)


頭が混乱している中ふと感じた。


「…?足が軽いぞ…」


ケガをしてから10年、ここまで違和感なく自分の足を動かせたことはない。

ふと自分の足が目に入る。


(なんか足ちっちゃくね??)


手も見て、余計に頭が混乱する。どう考えても成人している男性の手には見えない。

周りを見渡すと見慣れた風景と、小さなバスケットボールと使い込まれたバッシュ。


慌ててカレンダーをみる。そこには


「2003年4月…?過去に戻ったのか…?」


少しずつ蓮の頭が現実を受け入れ始めた。


「れーーーーん!!!朝だよ!!!学校遅刻するよ!!!」


懐かしく、よく通る声が部屋の外から響く。


(……この声……母さん……?)


信じられない思いで、蓮はベッドから飛び起きた。


(……マジかよ……)


まさかとは思ったが、どうやら本当に過去に戻ってしまったらしい。

しかも、これはただの夢や幻ではない。


——自分の足が軽い。

——手術の跡もない。


「……ってことは、俺の膝……」


蓮はゆっくりと、恐る恐るジャンプしてみた。


ピョンッ


「……っ!」


驚いた。まったく痛みがない。


むしろ、体が軽い。膝が壊れる前の、自分の体そのものだった。


(嘘だろ……)


蓮はゴクリと唾を飲み込んだ。

この状況が何を意味するのか、考えるより先に心臓が高鳴る。


もし本当に過去に戻ったのなら——


(俺はもう一度、やり直せるってことか?)


すると、ドアが勢いよく開いた。


「ちょっとー!起きてる!?早くしないとほんとに遅刻するよ!!」

仁王立ちの母親の姿。記憶の母親よりもだいぶ若いその姿。


「えっ…、あぁ…」

「ボーとしてないで顔洗ってきな!!」

こう怒られるのもどこか懐かしい。


「…母さん…」

「どうしたん?体調でも悪いんか?」


蓮は胸の奥底に眠っていた熱が燃え上がるの感じた。


「いや、何でもない…。顔洗ってくる。」

「はいはい、急ぎなさいよ。」


鏡に映る幼い自分をみて蓮は改めて実感した。


(また、全力でバスケができるっ!!!)

(今度こそ俺もあいつら二人と同じ舞台にっ!!!)


鏡に映る蓮の瞳には、確かに小さく残っていたバスケへの残り火が、静かにだが確実に燃え上がり始めていた。


小さな手のひらが、未来への決意で熱を帯びる。

前世では叶わなかった夢。日本代表の舞台に立つこと。

翔と迅と、もう一度肩を並べて戦うこと。


「……よし」


蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗う。

思わず笑みがこぼれた。


(ここからが俺の、本当のバスケ人生だ)


——こうして、蓮の"二度目の青春"が幕を開けた。






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