君への愛がとまらない♡
三愛紫月
引退
「私、モモは今月を持ってjuiceを卒業し、芸能界からも引退します!!!」
ーーえっ?
持っていたうちわとペンライトが床に落ちる。
小学二年生から推していたモモちゃんが、今回のライブで引退を発表するなんて聞いていなかった。
ーー嘘だろ。
がっくり項垂れながら帰宅した。
最後の曲も、アンコールも、もはや覚えていない。
帰宅して、僕はベッドに寝転がる。
天井に貼られたモモちゃんのポスターと目があって、大きな溜め息を吐く。
僕が、モモちゃんに出会ったのは小学二年生の時だった。
僕が大嫌いな野菜ジュースを、CMでゴクゴク美味しそうに飲んでいたのがモモちゃんだ。
その笑顔に僕は釘付けになり、モモちゃんの出るCMを録画しては何度も何度も見たのだ。
それからしばらくして、モモちゃんはドラマにも出るようになった。
しかし、モモちゃんが4年生になった頃だ。
テレビや映画でまったく見なくなってしまったのだ。
あの時は、本当にショックだった。
もう引退したのだろうか?
もう二度と会えないのだろうか?
僕の人生は、終わった。
もう生きていく気力もない。
もういいや、そう思っていた12歳の夏。
「皆さん、こんにちは。juiceです」
母と買い物に行ったデパートで、僕は再会したんだ。
「みんなのアイドル、リンゴです」
「元気いっぱいイチゴです」
「泣いたり怒ったり感情いっぱいモモでーーす」
「大声担当、ミカンです」
モモ……。
僕は、その声に足を止める。
「どうしたの?」
「僕、この人達見たい」
「わかったわ。じゃあ、お母さん買い物行ってくるね」
「うん」
お年玉の入った財布を握りしめながら見に行く。
まだ、売れていないjuiceを見ているのはわずか数人だけだ。
「それでは聞いてください、juiceで未来」
やっぱり、モモちゃんだ!!
この日、僕は生きる意味を見つけた!!
「CD購入してくれた方は、握手ができます」
歌が終わって、スタッフがCDを購入してくれと促している。
もちろん買う!!
買うに決まっているじゃないか。
当時は、juiceのメンバー全員と握手が出来た。
モモちゃんと初めて握手をした時の事は、昨日のように覚えている。
震える声で「応援してます」と言った僕に、 「ありがとう」とあの笑顔で笑ったのだ。
おこづかいやお年玉をモモちゃんに使い、働いた時に返す約束で父に借金をしてライブに行った。
あれから、5年。
僕の人生は、全部モモちゃんだった。
なのに……。
何で、引退なんか。
ショックで寝込み続けたいのに、朝はしっかりやってきた。
それからは、何だか廃人みたいな日々を過ごし。
モモちゃんが引退した。
引退コンサートは、残念ながら落選し。
Blu-rayの発売を待つしかなかった。
僕の人生は、終わった。
モモちゃんがいたから、ずっと頑張れた。
大嫌いな学校も頑張って行ってたのに……。
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