納得いかないから売らねぇっつってんだろー最強鍛冶屋の狂宴-
フェニックス太郎
第1話 狂気の鍛冶屋と振り回される連中
旧魔王領と王国の狭間に位置する村「ハザマ」。
10年前に魔王が滅び、平和が訪れたこの辺境の地は、最近になって魔王復活の噂でざわつき始めていた。
王都が勇者を募集し、魔王軍の影もちらつく中、村唯一の鍛冶屋ゴルド・ハンマーブレイドは今日も鉄を叩いていた。
45歳、髭ボサボサ、筋肉隆々のこのおっさんの頭の中は「伝説の最強武器」を作ることだけで占められている。
魔王だろうが勇者だろうが関係ない。
ただひたすら「納得いかねぇ」を繰り返し、世界最強の武器を日常に溶け込ませる狂気が、彼の日常だった。
その朝、ゴルドは鍛冶小屋の隅で黒い刃の剣を手に焼き上げた。だが彼はそれを手に持つと、「ふん、納得いかねぇな」と呟き、壁に無造作に立てかけた。
そこへ、3人の冒険者が鍛冶小屋に飛び込んできた。剣士のリーダー、魔法使いの女、盾を背負った大男だ。魔王領へ向かう準備のために、武器を求めてやってきたらしい。
「おい、おっさん! ここが村の鍛冶屋か?」剣士が威勢よく叫ぶ。
「こんな辺境に良い武器があるとは思えねぇが、魔王軍との国境だ。一応準備しとこうぜ!」
ゴルドはハンマーを手に持ったまま振り返る。「あぁ? 武器ならそこらに転がってる。見るなら勝手にしろ。俺は忙しいんだよ」
冒険者たちが小屋を見回すと、剣士の目が先ほどゴルドが完成させたばかりの黒い刃の剣「魔剣ラグナロク」に吸い寄せられた。黒光りする刀身から溢れる圧倒的な気配。ステータスを確認すると、攻撃力999が輝いている。
「お、おい! 攻撃力999!? 最強じゃねぇか!!」剣士が叫び、魔法使いと盾男が目を丸くする。
「999!? 魔王の幹部だって一撃よ!」魔法使いが興奮する。
「こんな辺境にこんな武器が…すげぇぜ、おっさん!」盾男が感嘆する。
剣士が目を輝かせて詰め寄る。「おっさん! この魔剣ラグナロク、売ってくれ! 金ならいくらでも出す!」
ゴルドは鼻をほじりながら一瞥する。「あぁ、それか? 納得いかねぇ出来だから売らねぇよ」
「納得いかねぇ!?」3人が一斉にずっこける。
剣士が頭を抱える。「何!? 999が納得いかねぇってどういうことだよ!」
そこへ、村の外から騒ぎが聞こえてきた。魔王軍の先遣隊、黒い甲冑の魔将が村に現れ、「武器をよこせ!」と吠えている。
村人たちが慌てて鍛冶小屋に駆け込んでくる。「ゴルドさん! 魔将が来たよ! 追い払ってくれ!」
ゴルドは面倒くさそうに鼻を鳴らす。「あぁ? うるせぇな。俺は鉄叩いてんだよ」
魔将が鍛冶小屋に乗り込んでくる。「貴様が鍛冶屋か! この魔剣ラグナロク…攻撃力999だと!!!!? よこせ!」
ゴルドは壁の剣を見て言う。「あぁ、それか? 納得いかねぇから売らねぇよ」
「何!?」魔将が絶叫する。「貴様、魔王軍を愚弄するか!」
剣士が慌てて割り込む。「おっさん! 魔将に渡すくらいなら俺たちに売ってくれ! 魔王倒すのに必要だ!」
「だから納得いかねぇっつってんだろ」ゴルドはハンマーを振り下ろしながら続ける。「あんな見た目じゃ俺の目指す最強には程遠い」
すると、魔法使いが作業台に目を留める。「ねえ、あれ何!? すげぇ輝いてる!」そこには「聖剣グランドクロス」(攻撃力1200)が置かれていた。聖なる光を放つ超絶な一品だ。
「攻撃力1200!? おっさん、これ売ってよ!」魔法使いが叫ぶ。
ゴルドはチラッと見て言う。「あぁ、それか?
これは俺の包丁だ。納得いかねぇから売らねぇよ。飯でも食うか?」
「包丁ぅ!?」冒険者と魔将が一斉にずっこける。
魔将が震え声で叫ぶ。「攻撃力1200が包丁だと!? ふざけるな!」
村人たちが呟く。
「ゴルドさん、いつもこうだよな…」「毎回これで慣れたよ…」
その時、村の子供が駆け込んできた。「ゴルドおじちゃん! 裏の畑に猪が出たよ! 追い払って!」
ゴルドはため息をつき、「魔斧デスブリンガー」(攻撃力1100)を手に持つ。「ったく、しょうがねぇな」と外に出る。冒険者と魔将が目を丸くしてついてくる。
ゴルドは斧を軽く振り、衝撃波で猪を吹き飛ばす。
子供が喜んで叫ぶ。「やったー! ありがとう、おじちゃん!」
剣士が震え声で言う。「お、おい…今のはなんだよ…それ売ってくれよ!」
魔将も叫ぶ。「貴様! その斧を魔王軍に献上しろ!」
ゴルドは斧を肩に担いで一言。「あぁ、これか? 薪割り用だ。納得いかねぇから売らねぇよ」
「えぇーーー!!!」冒険者と魔将が同時に叫び、その場に崩れ落ちる。
その夜、鍛冶小屋ではゴルドが新たな武器を打ちながら、冒険者、魔将、村人たちが勝手に集まって飯を食っていた。聖剣グランドクロスで切った野菜、魔斧デスブリンガーで焼いた肉、魔剣ラグナロクで突いた魚が並ぶ。
「う、うまっ…」剣士が涙を流す。
「屈辱だ…だが美味い…」魔将が震えながら食べる。
「ゴルドさんの料理、やっぱ最高だね!」子供が笑う。
ゴルドは鉄を叩きながら一言。「ふん、料理も納得いかねぇな。次はもっとうまく作るか」
全員が一斉にずっこける中、ゴルドの狂気的な日常は今日も村を振り回し続けていた。
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