第20話:逢いびきの森で
☆ ★ ☆
「セリナちゃん、本当に勝っちゃったのね」
セリナとエーヴィッヒ卿がどこかへ一緒に去っていったのを眺めながら、アルテは感心して呟いた。
服をぎゅっと握りしめて立ち合いを見ていたリリィは吐息とともに体の力を抜いている。
「本当に。怪我がなくて良かったですわ」
「それは本当にね」
アルテにとっても同意見だった。
応援はしていたけれど、同時に怖くもあった。
「ここで待ってたらセリナちゃん戻ってくるかな」
「多分そうですわね。……アルテ様。そう言えば、わたくし、あなた様にお会いしたら言いたいことがありましたの」
「私に?なあに?」
「わたくし実はあなた様のことが好きではないのです」
「うん。知ってる」
知っていた。
ずっと前からそれは知っている。
「驚かないのですの?」
「うん」
「なぜだか聞きませんの?」
「だって……あなたはセリナちゃんのことが好きなんでしょ?」
リリィちゃんは軽く目を伏せた。
「そうですの。わたくしはセリナちゃんのことが好きなんですの。でもセリナちゃんの気持ちも応援しているのです。だから、わたくしはあなた様のことが憎いですの」
「分かるわ」
何しろ恋敵ということになる。
「分かっておりませんわ。きっと。セリナちゃんがあなた様が好きなこと、それはわたくしもとっても分かっておりますの。そして絶対にあなた様と結ばれてほしいとも思っていますの。それはもうずっと覚悟しておりましたの。だってわたくしは。わたくしにはセリナちゃんのように何もかも投げ出して好きな人と一緒になりたいと。そんな勇気がありませんから」
「それはきっと。みんな無いわ。そんな勇気。セリナちゃんが特別だと思う」
「そうですわね。せめてセリナちゃんには好きな方と一緒になって欲しい。だからこそ、あなた様が嫌いです。大嫌いです。セリナちゃんの気持ちに応えないあなた様が」
「うん」
彼女にはそれを言う権利があった。
空を見上げる。
数多の星が輝いている。
星の数は300年前と変わらない。
でもどれだけ星の位置が変わっただろうか。
少しだけ記憶と違う。
私の中の星空はいつでもあの時に見上げたあの瞬間の形だった。
リリィちゃんに向かいなおして首を振る。
「私じゃ駄目なの」
「なぜですの。セリナちゃんは。セリナちゃんはあなた様でないと駄目ですの。あなた様じゃないと」
「分かってる。だからこそなの」
「だからこそ?」
「うん。だからこそ。私じゃいけないのよ」
「分かりませんわ。何のことを仰っていらっしゃるの」
「言えないの。言ってしまうと消えてなくなってしまうかもしれないから……」
「セリナちゃんにも言えないのですか」
「言えない。あなたにも。セリナちゃんにも。誰にも。きっとずっと」
「そんな。ずるい。わたくしは……あなた様のことが許せません」
「分かってる。だってこれは私の本当にずるい気持ちだから」
睨みつけてくるリリィちゃんに、ただ頷くことしかできなかった。
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