どこよりも安全な場所で

 私が私を取り戻した時、そこはどこまでも小学校でいずれは果てる夏の夢だった。

 ーー語彙想起と調整に多少異常を来しているらしい。まあこの世界に馴染み始めたら概ね落ち着くことだろう。ひまわりの咲き乱れる出来損ないの子供よりはだいぶ距離をとったほうが良い。ほらこのザマだ。

 上履きに大量に入れられた画鋲を力強く踏み締め、私は校内に足を踏み入れる。自然と溢れる笑みを抑えることができない。私は高校2年生で今日から新学期なのだ。

 いよいよいけないぞ。行動と感情制御もろくに出来ていないじゃないか。別位相に生成した弊害かな。3次空間の人間を対象にしたのは初めてだったから色々上手くないことが起きてるみたいだ。

 どういうこと? 私は私なの? 

 君は君だけれど意識が混濁している、というよりも一体化してるらしい。肉体は君のものだけど僕の意識が君の中に混ざっている。

 私は自分のクラスの引き戸を勢いよく開け放ち、制服のブレザーのボタンを外した。クラスメイトの視線が集まる。無理もない。この宇宙での君は学校1の美人で成績もいい。教師からの評判もよく男子生徒の憧れの的、品行方正で通った犬吠埼家のお嬢様だ。そのお嬢様が新学期早々遅刻して堂々と入ってきたんだからね。

 私はいつもの笑顔を作り、深くお辞儀をした。

「遅れてしまってすいません、ちょっとチンボコから口が離せなくて」

 静まり返る教室。皆一様に信じられないものを見た、というような顔で唖然としている。

 せっかく作ったけどこれじゃもう台無しだな。僕としても存在消失は好ましくないし、君と同化した状態じゃあ色々不都合もある。一旦この宇宙は放棄したほうがいいと思うんだけど。

 嫌よ。まだこれくらいならちょっと勉強疲れでご乱心って感じにオチもつけれるはずだから。

 私はそのまま流れるような動作でパンツを脱ぐとすぐ近くに座っていた男子生徒の口にそれを押し込む。立ち尽くす教師に向かって一礼すると、スカートをたくし上げ、自分の指で性器を大きく開いた。

 ダメだ。起点宇宙の影響が強すぎるらしい。このままじゃ宇宙が崩壊する。一旦リセットするしかない。

 どうしたらいいの?

 一旦分離する。君の座標を失わないようにしたいけど、多分難しい。いいかい? 僕の名前を忘れないで。君と遭遇する確率は億に一つくらいのものだけど、僕の名前を覚えていれば或いは可能性があるかもしれない。

 私はどうなるの?

 どこかの宇宙に生成される。今の君は僕が再設定し直した半幻想4次の存在だから、君は君を保持できるはずだ。

 どこに出現しても強くてニューゲームってこと?

 まぁそういうこと。

 私は教壇に登り、大股を広げて激しく自慰に耽っている。異常なまでに分泌され、飛び散る愛液が最前の男子生徒の顔を汚す。彼の目もすでに正気ではなく、剥き出しの下半身を食い入るように見つめながら夢中でペニスを扱き上げている。

 よく見ると他の男子生徒もみんな机の上にペニスを出し、拳を振り上げて叩いていた。

 女子生徒はそれぞれシャーペンや鉛筆を目につき立て、ぐりぐりと抉り遊んでいた。血とよくわからない液体が机にびちゃびちゃと垂れている。

「出席をとります。出席をとります。出席をとります」

 壊れたラジオのように担任の教師が繰り返しているが、やはり露出した肉棒はガチガチに勃起している。

 忘れないで。僕の名前を。

 最前の男子が射精した。ものすごい勢いで吹き出した性液が私の秘部にかかる。

 と、それにつられたかのようにあちこちで男子生徒が射精した。

 プシュップシュップシュッ。

 次々とシャンパンを開けた時のように性液が飛び交う。

 ちょっとちょっとちょっとあなたの名前ってなんだっけ? 

 犬吠埼地獄。

 僕の名前は犬吠埼地獄。

 

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