あなたの点数は?
風花ふみ
第1話
アイドルは私の天職だと思う。
「ゆりりん、今日は100点だよ」
「ほんと? ありがとー嬉しい!」
目の前のファンにニコニコと愛想笑いを振り撒きながら、お礼を言う。今日は特典会、つまりCDを買ってくれたファンと握手や写真撮影を行う日だ。
私は五人の女性アイドルグループのメンバーだ。路上活動から始まり、最近では徐々にテレビの露出も増えてきた、人気上昇中のグループ。私は途中から加入した追加メンバーだった。
アイドルには、何が必要だろうか。と考えることがある。
もちろん整った顔や愛嬌も必要だが、それ以外にも求められる能力が多い。歌、ダンスに、トーク、そしてファンとのコミュニケーション。それが一つでも武器になれば、ファンはついてくれると思う。逆にそれらを全部持っていなくても、アイドルの場合は「欠けていること」が魅力になることもある。それは「応援したい」と思わせることができるからだ。
だからといって、簡単なことだと言いたいわけではない。アイドルは意外と頭も使うと思う。先程挙げた通り、まず歌もダンスも覚えないといけないし、握手会などではファンの顔も覚えないといけない。何度も通ってくれるお客さんのことを覚えないと、人によっては離れていってしまう。
私は(自分で言うのもあれだけれど)顔もかわいいが、記憶力もいい方だった。そしてコミュニケーション力にも自信があった。相手が何を伝えようとしているのか、瞬時に読み取り、相手の欲しい言葉を言う。
緊張したファンは、パニックになって何を言ってるかわからないことも多い。それでも私たちは嫌な顔をせず、ニコニコと話を聞く。私だけはあなたの味方だよ、あなただけのものだよというふりをして。私はその「ふり」も得意だった。
そういう意味でアイドルは私にとって天職だと思っていた。
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