成り行きで異世界転生

乙坂創一

序章『日常の終焉』

プロローグ 「ordinary days」

とある日の学校帰り。電車内の通路を歩く五人衆。


「奥まで来たけど 席空いてねーな」


「もうここで良いよ」


五人は、ドア付近に集まった。最寄りの駅に着くまでの間、電車に揺られながら雑談をして過ごす。


「着いたか また明日な」


『じゃあな 壊斗』


一同口を揃え、別れの言葉を口にした。




ピピピピッというアラームの音で目が覚める。


「…ふわぁ〜 眠…」


大きく背伸びをし、起床する。おもむろにスマートフォンを開くと、午前8時を示していた。


そんな感じで、ごく普通の高校生活を謳歌してきたのが、工崎壊斗クザキカイト。現在19歳、大学2年生。


大学生活では学費を稼ぐ為にバイト三昧の日々を送っている。時給の良さに惹かれ、夜勤を多く入れすぎたせいで、大学で出来た新しい友達と遊ぶのは疎か、中高時代の友達ともロクに会えてない。故に、あの頃の夢を見たのだ。


何気ない事でさえ夢に見る程、退屈な日々を過ごしていた。


起床後、洗顔と歯磨きを済ませ、朝食をとる。母親が作り置きしていった朝食のラップを剥がして、一人黙々と食事を済ませた。


7月14日。その日は大学を全休にしており、バイトも入れていない。休みだろうと、極力健康的な時間に起床し、ジョギングをする。それが日課になりつつある。


白いパーカーに白いシャツ、青暗いジーパン。いつも通りのラフな恰好をして玄関のドアを開けた。




「うわ 外あっつ…」


玄関を開けた瞬間、やけに強い日差しに目をすぼめ、押し入れから帽子を出しておけば良かったと後悔をした。


暫く歩いていると、なんの前触れもなく道路標識の『止まれ』が折れ、壊斗目掛け一直線に倒れ込んで来た。


間一髪避けることに成功した。標識は、高い所に設置してあり、もし避ける事が出来なければ、怪我だけでは済まなかっただろう。今日は厄日だ。と思いながらも、来た道を引き返す事はしなかった。


そういえば、ここ近々、命の危機に晒されることが多々あった。銭湯で思いっきり足を滑らせ転けたり、夜勤明けに不審な人物と遭遇したりと様々。今の標識だってそうだ。ただ、今のところ無事に生還している。奇跡のオンパレード。


「はぁ、運が良いのか悪いのか…」


そんなくだらないことをボーっと考えていて、周りが見えてなかった。


遠くの方から大声が聞こえ、ふと我に返った瞬間。声のする方角へ向こうと思った刹那の瞬間。電車に撥ねられた。


踏切を超えた所に呆然と立ち尽くしていたみたいだ。その事に気づいた時にはもう手遅れ。 普通、踏切の音に気づかない事は無いはずなのに。


何故か安全装置が作動せず、そのまま電車に引き摺られた。壊斗は、体感したことの無い感覚を味わっていた。電車に轢かれる瞬間、辺りが急激にスローに見えた。


ただ、電車と自分との距離、特急電車の凄まじいスピードから逃れられるわけも無く、爆発音が鳴り響き、そこから音が聞こえなくなった。


四肢が爆ぜ、身体の部位が四方八方に吹き飛ばされた。血飛沫や人間の油で電車を赤黒く染める。その後、分解されて部品のようになった体は砂利に叩きつけられ、重たい車輪で残った肉や皮、骨をすり潰し、ひき肉にされる。


朦朧とする意識の中、思考をすることは不可能だった。



すると────


痛みを感じる間もなく、壊斗は意識を失った。


肉や皮が砂利と一体化する。そんな光景を目の当たりにした周りの人は、大声で泣き叫ぶ他なかった。


死にたくない。と言う感情は湧いてこなかった。それ以前に、そんな事を考えるのは、脳と神経が許してくれなかった。目の前が真っ暗になり、一瞬で五感を全て失った。




再び意識を取り戻した時、壊斗は真っ白な部屋にぽつんと立たされていた。

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