花園の夢魔〜初心な少女は追放先の人間界を満喫します!!〜

たっきゅん

第1話 転入初日①

 私、サユ・ナイトメールはとある事情で人間界へとやってきた女夢魔サキュバスで、今は内藤ないとう咲由さゆと名乗っています。郊外にある一軒家に暮らしながら中学校へと通っている……と、いっても今日が転入初日なのですが、それでもごく普通の少女です。

 

「ぅー、げっぷぅ」

 

 そんな私は抱いて寝ていた使い魔で友達のクゥちゃんから可愛らしいゲップ音が聞こえて目を覚ましました。

 

「んー! おはよう、クゥちゃん! 今日も夢をありがとっ♡」

「くぅくぅ~っ♪」


 上半身を起こして腕を上へと伸ばします。今日も快眠、絶好調! この子は夢喰いバクで、こうして一緒に寝ることで夢の中でも一緒にいられるのです。 お腹の上に乗った、といっても重量がほとんどないクゥちゃんをお礼を言いながら撫でてあげると嬉しそうにその丸い体を揺らしました。

 

「私が夢魔女だとわかると目つきが変わって怖かったもんね。ほんと、クゥちゃんがいてくれてよかったよー」

「くぅ~~っ♪」 


 夢魔は寝ている間に他人の夢へと侵入します。それは種族としての強制的なものでそこに私の意思は関係ないのです。そして、夢魔女は男性に夢の中で快楽を与えて虜にするために存在している……のですが、私はそれがどうしてもダメで夢魔女教育課程も欠席、悪魔学校を退学になり魔界を追放されました。


 そんな私と幼い時から一緒にいてくれるクゥちゃんは、私の嫌いな男性の欲望から守てくれる騎士ナイトです。私が見たくない人の夢を悪夢と認識した場合、この子は餌として悪夢を食べて私にとって幸せな夢へと変えてくれます。今日も怖いおじさんは私に姪っ子を重ねた優しいおじさんに変わり、楽しい遊園地に連れて行ってくれる夢になりました。なので私は夢見がいいのです。

 

「ぐへへ、今日もとてもお可愛いですね。ええ、本当に寝顔も寝起き姿も可愛くて、私が夢魔男インキュバスなら夢の中でなくても襲っているところです」

「ひっ! ……だ、だれ?」


 ですが、そんな穏やかな時間はすぐに終わりました。部屋のどこからか変態的な発言が聞こえてきたのです。私は恐怖心を抱いて急いで布団を抱き寄せ、無駄だと思っていても不審者に体を許したくない。そんな一心で身を固めます。

 

「失礼。心の声が駄々洩れになっていたようです。それはそうとサユお嬢様、おはようございます」

「マ、マイヤー!? あなた、一体どこに――」

「くぅ~?」


 朝の挨拶をされてようやく、侍女であるマイヤーの声とわかりキョロキョロと周囲を見渡しました。けれど部屋には彼女の姿が見つかりま……せんでしたが、クゥちゃんがベッドの下から伸びた棒とその先端に取り付けられたスマートホンを見つけて鼻でつつきます。私はその持ち手側、ベットの下を覗き込みました。

  

「……おはよう、マイヤー。えっと、自撮り棒は盗撮のために使いものではないと思うのだけど」

「それはもちろん存じております。しかし、お嬢様の成長の記録をご両親へと報告するのが私の仕事……であるなら! 最高に可愛いサユお嬢様の寝顔や寝起き姿を撮影する責任があるのです!」


 確かに過保護なお父様とお母様は魔界を追放された私に住む場所、お金、使用人まで付けてくれました。代わりに近況連絡は定期的にすることを条件にです。なのでマイヤーの行動は確かに職務の一環なのですが……。


「とりあえずその自撮り棒とベット下に潜ることは禁止します。それと罰として最高に可愛く身嗜みを整えてください」

「っく、罰は素直に受けます。ですがお嬢様、そんなに意気込んでも女学院ですよ?」

「だからこそです!」


 華夢希ハナユメキ女学院は中高大一貫のお嬢様学校、そこで私は夢を叶えるのです。


「夢魔女だからと汚らわしい目を向けられない楽園……私はこの学院で友達を作るのよ! そして叶えるのよ――友達を作るという夢を!」

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