四十話 揺るぎない情報
命達三人は空き教室で元一年一組の生徒が今どのクラスにいるのか、そしてどういった生徒なのかを確認していた。
元一年一組は全四十名で構成されており、担任は辰雄の情報通り二木知正。
イジメ被害者は五名。そして行方不明になっている学生六名。
現段階で狙われる可能性が高いのは全員で二十九名となった。
「二十九人全員がイジメしてる事なんてあるのか?」
「分からない……導、頼みたい事が丁度今できた」
道輔の問いに上手く答えらなかった命。確かに二十九人全員がイジメをしているのならそれはそれで誰かが気付くはず。そこでふと良い考えが頭に浮かび、導に声を掛けた。
「できる範囲であれば手伝うよ」
「穢レ人の状態になって残り全員の素行を覗いてくれないか?」
誰にも見えない体を持っている導にしかできない仕事をお願いする。
「分かった。善は急げだ行ってくるよ」
快く了承し、すぐに教室を後にした。
「俺も小林君からもう少し話聞いてくる。元一年一組のメンツでイジメをしたことが無い人を聞けば結構人数絞れるはずだし」
自主的に道輔は考え、発言する。
「俺は堂島さんに転校した人達について調べてもらう」
道輔は短い休み時間で全てを聞くために質問の内容をまとめている。命は音を立てずに廊下へと向かった。
「深淵対策課堂島だ」
ワンコールで通話に出てくれる。
「東岡です」
「どうした?」
「実は調べて欲しい人が何人かいて、調べて貰っても良いですか?」
「勿論だ。すぐには無理だが明日までには情報を集めておく」
「それじゃあ言いますね――」
命は転校した学生の名前を伝える。通話越しで守は名前を復唱しながらメモを取った。
「分かった。引き続きよろしく頼む」
すぐに取り掛かると付け加えて通話は終了した。その後、命は現状できることが無いため再び敷地内の浄化を始めた。
本日、最後の授業中。道輔と導は情報収集が完了したようで早速成果を発表し始めた。二十九人の内、素行が悪いと判断したのは五名。また勇気の情報で行方不明者以外でイジメをしているとうわさになっていたのも同じ五名と生き残りの一名だった。
「つまり残りの二十三人は加担してはいない?」
「隠れてやってる可能性はあるけど、去年自殺問題が起きた時に行方不明者と生き残りの子とさっきの五人がよく話題に上がってたんだとさ」
メモ帳を見ながら道輔は話す。
「その六人は最優先で守るべき存在という訳だね」
結果を声に出して導はまとめる。
「ちなみにどんな子?」
命が尋ねると道輔は校長から借りた写真付き名簿を指差す。
福井 梨々花(フクイ リリカ)
横田 知美(ヨコタ トモミ)
佐野 和人(サノ カズト)
中山 宗弘(ナカヤマ ムネヒロ)
工藤 雄太郎(クドウ ユウタロウ)
以上、五名。全員爽やかな笑顔で写っており悪さをするイメージなど到底持てなかった。
「ここからは正直、賭けになる。二十九人に絞って全員の家に深淵対策課が生活安全課と名乗って家庭訪問してもらう」
道輔はホワイトボードに棒人間を沢山書いて説明を始める。キュッキュッとペンが走る音が教室に響く。
「俺達三人は優先度の高い六人の家以外に対策課が異変を感じた家も範囲に入れてそれぞれ一晩中監視を行う」
”俺達”と丸で囲まれた棒人間を指差す。そして三人で行う作戦を話した後、目線を命に向けた。
「全校生徒に情報通達は時間的にも対策課のマンパワー的にも無理がある。だから絞って監視する。勿論この仮説が正しくなければ人を見殺しにする。でも”運”で行動するわけじゃない。今までの調査で培った揺るぎない”情報”で行動するんだ」
今を捨てて未来を取る。しかしそれは今を諦めている訳では無い。今で得たモノを未来に渡す。しっかり言語化して命に伝えた。
産まれつき穢消師と後から穢消師になった人間の価値観は違う。今回の任務で命を見て道輔は自分の当たり前を改めた。
「分かった。道輔を信じるよ」
「私もその策に乗ろう」
導も快く作戦に乗った。道輔はペンを手放してリュックへと手を伸ばす。中から数枚式神を取り出して二人に伝えた。
「俺はクラスに式神置いて、堂島さんか安藤さんに電話するから好きにしといて」
「わかった」
「私は少し考え事がしたいからここにいるよ」
「じゃあ行ってくる」
道輔はそう言って教室の扉をゆっくりと閉めた。
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