旅立ちは突然に

「あれ、この魔力は……遂に時が来たのね!」


私、シャルロッテは遠くの地で上がる旧友の魔力を感じ取る。


暗く、深く、それでいて誰よりも大きな魔力。


こんな力を他の人と間違えるわけはない……間違いなく彼女だ。


「ということで、私は旅に出るね!」


仕事から戻ってくるなり、父と母にそう宣言する。


「は、何を言ってるんだ?」


「ロッテにはまだ仕事があるでしょ?

我が家には貴女を自由にする余裕なんて無いわよ」


当然ながら父と母は即座に否定して却下する。


それはそうだろう……この世界の平民の子供は立派な労力。


そんなに急に旅に出ると言って許してもらえるはずがない。


「ああ、その辺は安心して。

はい、これ。

私が一生働いてもお釣りが来るくらいのお金」


「な!?」


「こんなもの一体どうしたの?」


驚く父と母だが、ここはマトモな思考になる前に畳み掛けさせてもらおう。


「犯罪で稼いだお金じゃないから安心して。

ちゃーんと、自力で貯めたお金だから。

例えばこんな感じで」


私が指をパチンと鳴らすと、空の水瓶の中に水が並々と湧いていく。


「これは魔法?」


「ロッテ……どう言うことなの?」


「実は私には魔法の才能があったんだよね。

それで、この才能が来年には見出されそうで、貴族の学院にスカウトされちゃうみたいなんだ。

でも、私が貴族の学校に行くなんてどう考えても無理でしょ?

だから、その前に姿を暗ます代わりに、お父さんとお母さんには私がスカウトされることで手に入る身請け金より多めに渡しておこうと思って貯めてたんだ」


「いや……だからと言って……」


「ええ……どう言うことなのよ……」


やはり口で説明しても理解はしてもらえなさそうである。


「まぁ、旅立つことは決めてたから私は行くよ。

元気でね、お父さん、お母さん」


そう言って後ろを振り返らずに家を飛び出した。


平民が一生かかっても手に入らず、遊んで暮らせるだけのお金は入ってるから何とかなるだろう。


将来、子供を貴族に売り飛ばす予定の両親には施しすぎまであるので感謝して欲しいものである。


「それじゃ、約束の場所に行こうか!

ルーくん、お願いするね」


「グルルルル」


私は魔法でペットのガルーダを召喚し、その背中に乗り込む。


この子の背中にはわたし専用の鞍が備え付けてあるので安定性も抜群だ。


「さぁ、あの人に会いに行こう!

私の愛しのお姉様に!!」

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