第35話

呪いを受けるのは今度は自分だと、凪子に縋りつかれてから明後日で八日目だ。だが、車窓の景色を眺める彼女に不安げな様子はない。変な動画を観て初めは気が動転していたものの、時間が経つにつれ、やはり呪いなどないのだと冷静になったのだろう。

 期末テストで当然のように首位だった彼女のプレッシャーは、夏月の比ではないに違いない。夏月がどんなに頑張っても、得意教科ですら凪子には勝てなかった。クラス別でトップなど、また夢だ。

 そんな凪子ですら、動画くらい観たくなるときはあるのだろう。偶々思ってもみない動画を開いてしまい、良からぬ不安に襲われただけに違いない。夏月は明日、凪子の家を訪れるべきかをまだ決めかねていた。

 バスを下車した二人は、校門をくぐって校舎の裏手に回った。テニスコートのある場所へ近づくにつれ、声援は一段と大きく聞こえてくる。

 コートは二面あり、一回戦と二回戦は同時に行われていた。夏月たちは木陰の中にあるアルミベンチに腰を下ろす。選手たちは反対側のベンチにいて、声援を送っていた。強豪校と言うだけあって、シングルスとダブルスのどちらも、美海たちのほうが劣勢に立たされていた。

「一回戦、負けちゃったわね」

 凪子が嘆くのと同じくして、離れたベンチに座る他校の生徒たちが歓声を上げた。三セットマッチだが、先に二セットを取られたのだ。

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