第4話

「いやー魔王大先生のおかげで素晴らしい隠れ家が手に入りましたね!」

『のじゃ! のじゃ!』


 コアを掌握したあと元ダンジョン(住民付き)は多少弄りはしたが、ほぼそのまま我が家として使うことにした。生後数か月にして広い土地と城塞庭付き一戸建てを手に入れてご満悦なオレとヨイショされて同じくご満悦な魔王。


 これで衣食住の“住”は解決したわけだが、実は同時に“食”も解決していた。ダンジョンの元々からの住民であったデモンゴート山羊さんも魔王が≪眷属化≫して隣人として迎え入れたのだが、彼女ら? がヤギミルクを提供してくれることになったのだ。

 

 モンスター食材は基本的に高級食材だからな。勇者が魔王製哺乳瓶で人肌に温めてくれたヤギミルクうめえ。


 これも勇者と魔王のバカ魔力のおかげで普通の赤ん坊より内臓も強靭だからだ。ヤギの乳がヒトのものに近いと言っても、さすがにモンスター産ミルクも同じように考えるわけにはいかない。ただ今後の成長に変な影響がでないか心配ではあるが……美味いからまあいっか。


 他にもデモンゴートたちには赤ん坊オレの世話や家事もしてもらっている。今後はダンジョン混乱期に野生化した家畜を転移魔法で回収して畜産だったり、植物系モンスターを集めて農業だったりを始める予定らしい。


 彼女らはダンジョンに支配されてる間、意志とかはなかったようで魔王が迷宮掌握時にある程度の意志を保障した結果、彼女らの魔王への忠誠心は青天井となった。もしかしたら意志の無かった時に蹂躙された恐怖が心の奥底に残っているという可能性も微レ存……彼女らを可愛がってる魔王には黙っておこう。

 

 モンスター娘たちの士気が高いのはきっと作った食料とか服とかは必要な分以外自由に使って良いと言ってあるからに違いない。恐怖政治なんてなかった。いいね?


 あと何気に魔王軍が構築されつつある気がするが、気にしたら負けだ。


 一方勇者は何か思うところがあるようで黙っていることが多くなった。魔王の躍進を警戒している、というよりは彼女が思いのほか真面目に支配者として振舞っていることに少し悩んでいる様子であった。


 これまでの関係性とかがあるのだろう。できれば前世の因縁はここらで断ち切ってもらえればありがたいのだが……魔王も根っからの悪人というわけでもないようだし。


 まあこちらは今すぐ解決できるものではないので放置だ。


 今優先すべきは情報と金。


 とにかくネットワークに接続できる端末が欲しい。これは情報収集のためにであって、決して強制ネット断ちのせいで禁断症状が出掛かっているからとかではない。早く推しを見つけてスパチャしてえなあ……あ、はい。勇者さんなんでもないんでその冷たい視線は止めてもらって。


 とりあえずネットワークや端末などの現代技術には魔王も興味を持っているので彼女と協力したいところ。


 前世ではエンジニア系の大学生だったので基本的な機械知識などは教えられる――逆に魔王や勇者からは魔術的なことを教えてもらっている――が、やはり言葉だけでは難しい。そもそもコアや魔術が融合したこの世界のデバイスはオレにとっても未知の領域である。


 個人的にも是非ともバラして研究したいものだ。


 魔王もサンプルさえあればリバースエンジニアリングできると豪語しているが、問題はどうやって現物を手に入れるかだ。


 盗むのは簡単だが、それを認める勇者ではない。違法かどうか現状判明してないダンジョンへの侵入が限度だろう。


 どこかにジャンクでも端末でもなくてもいいから、Dデバイスは落ちてないだろか。くそー金さえあれば全て解決できるのに。


 やはり脳内ゆうまお以外にも協力者が必要か。


 原作知識を使って丁度良い取引相手となる企業を探したほうが早いかもしれない。


『焦る必要はありません。少しずつ解決していけば良いのです』


 勇者はそう言うが、世界崩壊エンドを知っている身としてはのんびり成長を待っているわけにもいかない。とはいったものの一体今が原作時系列におけるどこに当たるのか……ゲームの日付なんて誰が憶えてるんだって話だ。


 何か目安になるような大きいイベントでもあれば良いのだが……。


 ぴこんッ!


 そうだ、北海道に行こう!


『いきなりなんじゃ』


 ちょっと確かめたいことがあって。北のほうに行きたいんだよね。このダンジョン、移動ってできる?


『ダンジョンがあるのは地球とは異なる次元よ。ダンジョンそのものを動かすのはやろうと思えばやれんこともないが、それよりゲートとなる魔道具を動かせば良い。ただし再接続には少し時間が掛かるがな』


 なら問題ないか。北海道に拠点を移そう。


 なぜならそこにはファンタジーな種族ヒロインが居るからね!

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