第10話 「おしゃれは自分が決める!」

 春の陽気が心地よい午後、私とミカはショッピングモールを歩いていた。新作のファッションが並ぶウィンドウを眺めながら、おしゃれなカフェを巡るのが今日の目的だ。


「サクラ、そのコーデめっちゃいいじゃん!」


 ミカが私の服装を見て、満面の笑みを浮かべながら言った。


「えっ、そう? シンプルすぎないかな」


 私は白いブラウスにデニムのスカートという無難な服装だったので、あまり特別な感じはしていなかった。


「いやいや、そのシンプルさがいいのよ!余計なものを足さずに、素材の良さを引き出してる!まさに"洗練されたシンプル"って感じ!」


 ミカは腕を組み、うんうんと頷いている。


「しかも、そのスカート、歩くたびにふわっと揺れるのがまた素敵!ナチュラルに計算された動きが出るとか、天才的センス!」


「そんな大げさな……」


「いやいや、サクラが選ぶものにはちゃんと意味があるんだよ!カフェ巡りするって決めてたから、気取りすぎず、でもちゃんとおしゃれっていう完璧なバランス!」


 そう言われると、なんだか自分の服装に自信が湧いてくる。


「でしょ? しかも、今のカフェ巡りスタイルの流行って、意識しすぎない"こなれ感"が大事なの。つまり、サクラは最先端!」


「そ、そうなの?」


「そう! もう雑誌のスナップ特集に載るレベル!」


 ミカがそう言いながら、スマホを取り出して私の写真を撮る。


「ほら、これ! めっちゃ映えてる!」


 スマホの画面を覗き込むと、私が何気なく歩いている姿が思った以上にそれっぽく写っていた。


「ほんとだ……なんか、いい感じかも」


「でしょでしょ!? これはもう、サクラのファッション革命が始まる予感!」


 そんな話をしているうちに、気になっていたカフェに到着した。落ち着いた木目調の内装に、ふんわりとしたパンケーキの香りが漂う。


「うわぁ、いい雰囲気! サクラが選んだだけあって、もう大正解!」


「いや、たまたまだよ」


「たまたま? いやいや、サクラの直感力をなめちゃいけない!おしゃれな人は、おしゃれな場所を本能で見抜くのよ!」


 そう言いながら、ミカはメニューを開き、目を輝かせた。


「よし、今日はサクラのおしゃれなセンスに敬意を表して、パンケーキで乾杯しよう!」


「パンケーキで乾杯って……」


 私は呆れつつも、なんだか楽しくなってきて、ミカと一緒に笑った。


 結局、ミカの言葉に乗せられて、私の普通の服装も、何気なく選んだカフェも、すべてが特別なものに思えてくる。


「やっぱりサクラはおしゃれの最先端だわ!」


「ほんと、よくそんなこと言えるね……」


「それが私の才能!」


 ミカは得意げにウインクしながら、パンケーキをフォークで掬った。


 今日もミカのおかげで、何気ない一日がちょっと楽しくなる。


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