絵里①
あの日は早く家に帰った。弟の悠真はゲームに夢中で、誕生日にねだって買ってもらったやつだし仕方ないと思いながら2階に上がろうとした。
洗濯物を抱えたママが降りてきて「おかえり」って笑ってくれた。あたしも「ただいま」って返して、宿題やっちゃうね、と続けた。
「あら珍しい」
「今日は課題少ないの。終わったら夕飯手伝う」
ママは「ありがとう」って言いながら階段を降りて、弟はずっとゲーム画面を見ていた。
7つも歳の離れた弟、両親から甘やかされてると思うし、あたしも悠真のことは可愛い。けど、時々どうしてもイライラすることがある。悠真のことで部活の試合を見てもらえなかったり、三者面談に遅れたり、話したいことを我慢したりした。
別に「お姉ちゃんだから」とか言われたことは無いけど、パパは会社が大変そうだし、ママもなんか最近忙しそう。だから、あたしはそうするべきなんだと思った。
だから宿題を終えて1階に降りてもまだゲームをやってる悠真を見たとき、ふつふつと怒りが湧いてきた。ママは夕飯の支度をしてるのに。ゲームは一日一時間でしょ?
だから、怒鳴って、ゲームを取り上げた。
そしたら、普段はおとなしい悠真があたしに「宿題、終わってるもん!」と怒鳴り返してきた。本当に、なんでだろう、我慢できなかった。
「ならママの手伝いしな!」ってさらに怒っちゃった。ルールは守ってる。ママも何も言ってない。それなら良いはずじゃん。
そうしたら、悠真、外に出ていっちゃった。
あたしは焦った。外はもう暗い。悠真はちょっと身体が弱いけど、足だけはすごく早くて。
ママも焦って、どうしていいか分からないみたいだった。だから、あたしも外に走り出た。
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