Rules of stray dogs. - 野良犬たちのルール

 「ルールやモラルなんてものは、しょせん弱者を守るためだけにある」…

これは正論だろうか?

全く違う。それを唱える一人の強者が永久に王者であり続けられる保障はない。

自ら年老いもすれば、新たにさらなる強者智者が現れ挑んでくることも多々ある。

大勢から一度に不意打ちされることもある。卑劣な手口や裏切りもある。


確かなのは「力によって栄える者は、力によって滅ぼされる」運命のみだ。


結果、ルールは善悪や強弱に関わらず、守る者を守り、秩序をもたらしてくれる。

以外にもこれをよく知っているのがトラッシュ とその仲間たち…

つまり小悪党なのである。

常に強者だけが生き残れるわけではない争いの世界では、知る知らないが生死を

分けるのだ。

野良犬たちの流儀は

「文句があるなら対人戦で決着をつけてもらおう。でなければ聞こえんな」だ。

勝てば悪も正義になる。負ければ善も悪にされる。

身勝手で自分にばかり都合のよい野蛮かつ傲慢な思考だ。だからといって負けても

潔く敗北を認めるようなフェアな者はここには一人としていない。だから返り血を

浴び、命を奪い、トロフィーを挙げたとて、こいつらはみんな人間としては負けている。

だから、いつも似たもの同士で群れている。

いつだって更正のチャンスはある。しかし楽な道を選び居心地のいいだけの場所に

似たもの同士群れて、真人間になるチャンスを蹴っている救いがたいやつらの溜まり場・・・それがここ"ガーベジ・ダンプ" だった。


そんな連中でも…いや、そんな連中だからこそ向いている仕事が最近できた。

デュエリングである。チェスの持ち駒のかわりに人を戦わせ、大金をかけるギャンブルで、富裕層や拝金主義者、上流社会人のひまつぶしとして始まった私的なゲームだった。はじめはどちらかが相手を殺すまでやらせていたが、のちに公営ギャンブルに

なり、審判ジャッジ制度になって死ぬか殺すかまではさせなくなった。

今はミウラ・アマンダラとかいう統括者が運営させているとか。まあ、こいつも遊び

で殺し合いを催していた富豪の一員なのだが、おかげで野良犬どもは食うにも暴れる

にも困らない。

"ガーベジ・ダンプ" は早いうちから参加していてトラッシュもデュエリストとして

登録していた。成績は3戦1勝1敗1不戦勝。ライト級に当たるファルシオン・ランク

では悪くはない。この道で食っていける。

が、今のところ公営アリーナからは何の公布もなく、デュエリングの試合は開催される様子はない。おかげで トラッシュ は無収入のままだ。しかし…参加しても今の

コンディションで勝ち進めるだろうか?

何か仕事を見つけよう。何もしないで飲み食いしてたって借金が増えるだけだ。


ガーベジ・ダンプの東壁にはいくつかの依頼が釘止めされている。

さすがここを当てにしているだけに、大きな声では言えない内容の仕事が多い。

かと思えば用心棒という限りなくグレーな存在もある。

エスコートは地理に明るいものが案内しつつ、非力な依頼人を護衛する仕事と定義さ

れているが、依頼人や自分を襲う者を用心棒が殺すことも、殺した相手から略奪する

ことも目をつぶるのがここの定法だ。

逆に依頼人に加害した場合は法律で裁かれるのは当然、さらにギルドから制裁を

受ける。最悪、賞金首になろうものならギルド仲間の誰かから稼ぎの的にされるかも

しれない。

表の世界の労働に比べれば楽な道かもしれない。しかし、どの道にもその道なりの

ルールが存在し外れたものは長生きできない。善人、悪人にかかわらずそれが社会の

しくみなのだ。

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