パート9: 依頼受注と準備

(よし、頼むぞ…!)


俺は依頼書を手に、空いているカウンターへと進んだ。

対応してくれたのは、朝とは違う、若い女性の受付嬢だった。


「こんにちは。ご用件は?」


にこやかな笑顔。朝の受付嬢のような、貼り付けた感じじゃない。

俺は新しいDランクのプレートが見えるように胸を張りつつ、依頼書を差し出した。


「この依頼を受けたいんですが」


受付嬢は依頼書を受け取り、俺のプレートにちらりと目を向けた。

その目が、ほんの少しだけ見開かれた気がした。


「はい、Dランクのユウキさんですね。『近郊森林の薬草採取 兼 ゴブリン斥候の討伐』、承ります」


声のトーンが、心なしか丁寧になったような…?


(おお…! やっぱりランクが上がると対応が違うのか!)


Eランクの頃は、名前すらまともに呼ばれなかったこともある。

それが「ユウキさん」だ。

些細なことかもしれないけど、すごく嬉しい。

これがDランクの世界か…!


「依頼内容、期限、報酬についてはこちらに記載の通りでよろしいですね?」


受付嬢は依頼書の内容を指さしながら、確認してくる。


「はい、大丈夫です」


「薬草の買取は、ギルドではなく薬師ギルドにて行いますのでご注意ください。場所はギルドを出て右手、二つ目の角を曲がったところにあります」


(薬師ギルドか。分かった)


「ゴブリン斥候の討伐証明は右耳ですね。森林内は視界が悪く、斥候は複数で行動している可能性がありますので、十分にお気をつけて」


「はい、了解しました」


テキパキとした説明は分かりやすく、好感が持てる。

朝の受付嬢とは大違いだ。


「では、こちらにサインをお願いします」


差し出された書類に、俺は少しだけ震える手で自分の名前を書き込んだ。

これで、正式に依頼受注だ。


「ありがとうございます。ご武運をお祈りしています、ユウキさん」


受付嬢は、今度は心からの笑顔でそう言ってくれた。


(ご武運、か…)


なんだか、本当に認められたような気がして、背筋が伸びる思いだった。


「ありがとうございます。行ってきます」


俺は受付嬢に軽く頭を下げ、カウンターを離れた。

手には正式に受理された依頼書。


(よし、これで準備は整った…いや、まだだ)


新しい装備と依頼は手に入れたけど、忘れてはいけないものがある。


(回復ポーションだ。オーク戦でほとんど使っちまったし、補充しておかないと)


いくら回復スキルを取るか悩んでるとはいえ、現状持っていない以上、ポーションは必須だ。

それに、解毒剤とか、予備の松明とか、他にも必要なものがあるかもしれない。


(幸い、金貨5枚と銀貨11枚がある。オーク素材を売ったお金だ。これで十分買えるはず)


俺はギルドの出口へ向かった。

目指すは、薬や雑貨を扱う店が並ぶ、市場エリアだ。


(まずはしっかり準備して、万全の状態で最初のDランク依頼に挑むんだ)


新しい装備、新しいランク、そして新しい依頼。

高まる期待と、少しの緊張感を胸に、俺は市場へと続く道を歩き始めた。

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