パート7: Dランクの世界と新たな目標

(Dランク…これが、俺の新しいランクか…)


青銅色のプレートを懐にしまい、俺は改めてギルドの中を見渡した。

見える景色はさっきと同じはずなのに、どこか違って見える。

いや、違うのは俺自身の見方か。


(そうだ、依頼掲示板を見てみよう。Dランクになったんだ、見れる依頼も変わってるはずだ)


期待に胸を膨らませ、掲示板へ向かう。

今までは一番下の隅っこにあるEランクとFランクの依頼しかまともに見れなかった。

だが、今は違う。


Dランクのセクション。

そこには、今まで見たこともないような依頼がずらりと並んでいた。


(おお…! すごい数だ!)


思わず声が漏れそうになる。

Eランクの依頼なんて、せいぜいゴブリン討伐か薬草採取くらいだったのに。


(『リザードマンの斥候部隊 討伐』(推奨ランクD)…報酬、銀貨30枚!?)

(『鉱山跡のオーガ一体 討伐』(推奨ランクD)…報酬、銀貨50枚!! オークより強いのか?)

(『護衛依頼:隣町までの商人護衛』(ランクD以上)…報酬、銀貨40枚+成功報酬)

(『希少鉱石の探索・採集』(ランクD限定)…報酬、採集量に応じて変動)


(すげぇ…! 報酬の桁が違う!)


銀貨単位が当たり前。中には金貨に届きそうなものまである。

Eランクの銅貨数枚の依頼とは、まさに天と地ほどの差だ。


(これなら…ちゃんと稼げる! もっと良い装備も、いつかは夢じゃないぞ!)


依頼の種類も、討伐だけじゃなく、護衛や探索、採集と多岐にわたる。

世界が、一気に広がったような気がした。


(でも…)


同時に、気を引き締めなければとも思う。

報酬が良いということは、それだけ危険度も難易度も高いということだ。


(オークはシステムのおかげでギリギリ倒せたけど、あれが毎回続くわけじゃない。Dランクの依頼を安定してこなすには、もっと実力を上げないと)


レベルアップはもちろん、スキルの習得や強化も必要だ。

装備は新調したけど、それだけじゃ足りない。


(となると、やっぱり残りSP4の使い道だよな…)


ウィンドウをこっそり開いて、ステータスとスキルを再確認する。


-----------------------------

名前:ユウキ

レベル:2

HP:?? / 89

MP:?? / ??

職業:探索者 (D) (↑)

(他ステータス略)

スキル:【パリィ Lv1】

残りSP: 4

-----------------------------


(職業ランクもDになってるな。よしよし)


SP4。

さっき武器屋で見たリストだと、【ファーストエイド Lv1】がSP4で取れたはずだ。

回復手段があるのは心強い。特にソロで潜るなら。


(でも、攻撃手段が通常攻撃と【パリィ】からのカウンターだけってのも不安だよな…)

(SP5あれば【パワーアタック Lv1】が取れたんだけど…あと1足りない!)


レベルが上がればSPはまた貰えるはずだけど、それがいつになるかは分からない。


(うーん…回復を取るか? それとも、次のSP獲得を見越して、他のステータス…例えば敏捷とかを上げておくか?)


敏捷が上がれば、攻撃速度も回避能力も上がるはずだ。【パリィ】のタイミングも合わせやすくなるかもしれない。


(悩むな…どっちがいいんだ…?)


すぐに結論は出そうにない。

まずは、どの依頼を受けるか、もう少し考えてみるか。

Dランクになったばかりで、いきなり高難易度の討伐依頼は危険かもしれない。

護衛依頼とか、探索依頼から始めてみるのが無難だろうか?


俺は再び依頼掲示板に視線を戻し、Dランクの依頼内容を一つ一つ、じっくりと吟味し始めた。

新しい世界への扉は開かれたばかりだ。

焦らず、着実に、強くなっていこう。

そう、心に誓いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る