星宿の光:青藍と千佳の28宿統合譚
mynameis愛
第一章:東方「青龍」圏へ1
1. 旅の始まりと角宿との出会い
霧がかった山道を、二つの影が歩いていた。
ひとりは、漆黒の外套をまとった青年。蒼藍(せいらん)は夜空を見上げながら、空気に混じるかすかな星の気配を探っていた。もうひとりの少女、千佳(ちか)は彼の後ろを歩きながら、時折小さな石を蹴りながら考え込んでいた。
「星宿の気配……このあたりにいるはずだ」
蒼藍がそうつぶやくと、千佳は彼の横に並びながら問いかけた。
「どんな人だと思う?」
「わからない。ただ、近い。夜になる前に会えるといいが」
蒼藍の言葉に、千佳は山道を見渡す。深い森が広がり、遠くから鳥の鳴き声が響いていた。
そのときだった。
遠くから、悲鳴と怒号が重なって聞こえた。
二人は即座に視線を交わし、音のする方へ駆け出した。
木々をかき分けながら進むと、小さな開けた場所にたどり着く。そこでは三人の男がひとりの青年を取り囲んでいた。青年は長い髪を後ろで束ね、草色の衣をまとっていた。彼の目は真剣そのものだったが、どこか迷いが見えた。
「予言が当たるお前がいると、村に災いが訪れる!」
「お前の力を恐れているんだ! 消えてくれ!」
男たちは青年に向かって木の棒を振り上げる。青年は冷静に身をかわしながら、わずかに唇を噛んだ。
「そんなの……俺のせいじゃない……」
蒼藍はその様子を見て、即座に駆け出した。
「やめろ!」
彼の声に、男たちは動きを止めた。千佳も後ろから駆け寄る。
「彼を責めるのはおかしいわ。何があったの?」
男たちは警戒しながら、青年を指差した。
「この男、角(かく)は少し先の未来が見える。村の収穫が悪くなるのも、盗賊が来るのも、全部予言した。だけど、それが本当になるんだ。まるで、災厄を呼んでるみたいに!」
角と呼ばれた青年は、拳を握りしめた。
「違う……俺はただ見えるだけなんだ……」
その声には、自分の力に対する葛藤が滲んでいた。
蒼藍は角に歩み寄り、真剣な眼差しで言った。
「お前の力は災厄を呼ぶのではなく、未来を知る力だ。使い方を間違えなければ、多くの人を救える」
「……救える?」
角は目を見開いた。千佳も彼に微笑む。
「ええ。蒼藍の言う通りよ。あなたがいれば、私たちは危険を避けられる」
男たちはそれを聞き、戸惑いの表情を見せた。しかし、そのとき、森の奥から低いうなり声が響いた。
黒い影が現れる。
「魔物だ!」
村人たちは悲鳴を上げて逃げ出す。角もその場で固まった。しかし、蒼藍は剣を抜き、千佳はすぐさま彼の後ろに立つ。
「角、逃げるか?」
蒼藍の問いかけに、角は拳を握りしめる。
「……違う、俺は……!」
彼の目が鋭く光る。
「魔物の動きが……見える……!」
角は小さく息を呑み、魔物が跳びかかる瞬間を正確に察知した。
「蒼藍、右へ避けろ!」
蒼藍は角の言葉に従い、間一髪で攻撃をかわした。
「次は左後ろ!」
蒼藍は瞬時に動き、魔物の首元に剣を突き立てた。
魔物は叫び声を上げ、地面に崩れ落ちた。
角はその場に立ち尽くす。
「……俺の力、役に立った?」
蒼藍は剣を収め、角の肩に手を置いた。
「ああ。お前がいなければ、俺はやられていた」
千佳も微笑みながら頷く。
「ねえ、角。私たちと一緒に来ない?」
角は目を伏せ、しばらく考えた。
村には戻れない。
だが、この人たちとなら——。
彼は深く息を吐き、微笑んだ。
「……行くよ。俺の力が、誰かを救えるなら」
こうして、角宿の青年・角が仲間に加わった。
続く
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