第2話
「いや、使いはもう出した。明日都へ向けて出立する由、早馬を遣わせた」
「流石は将軍殿、迅速な御処置、感服いたしまする」
宇佐がそう言って頭を下げる。
「そういう言い方はよしてくれ。二人の時は普通に話せ」
阿修麗が苦笑いして言う。
「ああ、少し水臭かったか?どうも癖になってしまったらしい。ま、それでは退却の合図を鳴らすよう言ってくるとするか」
「ああ、頼む」
阿修麗がそう言うと、宇佐は陣の幕屋へ向って歩いて行った。
阿修麗と宇佐は幼少からの親友で、くだけた話は勿論のこと他人には言えないような悩み事まで相談し合う仲なのだが、兵の前では礼節を守っているため二年もの遠征の間にどうも宇佐はそういう言葉遣いが癖になってしまったようだ。
宇佐が幕屋の中へ消えてから少しの間を置いて貝笛の音が辺りに鳴り響いた。
その音を聞きつけた兵達が退却を始めたのをその眼で確認してから阿修麗も幕屋へ向かった。宇佐が引き返してこちらへやって来るのが見えた。
(誰か居る……)
人の気配を感じて、阿修麗は剣の柄に手を掛けたままゆっくりと歩いた。
人が動くとそこに空気の歪みが生じる、それが微かであっても阿修麗には感じ取ることが出来た。
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