第5話 トレーニングダンジョン 1

 ゲートを潜ると、そこには古城の中のような景色が広がっていた。


 赤茶けたレンガ造りの壁と床。

 壁に等間隔で設置されたロウソク。

 全体的に薄暗く、THEダンジョンといった雰囲気だ。


「さて、まずは何を試そうか」


 身体を軽く動かし、ストレッチを行う。

 36歳の時は、身長が240センチあった。

 今の俺は、165センチほどだ。その為、軽くストレッチをするだけで、使用感の違いをヒシヒシと感じてしまう。


 まず四肢が短い。

 腕も脚も、何もかもがあの頃に比べて短い。必然的にリーチも短く、しばらくは間合いに困惑する日々が続くだろう。


「いきなり杉本に挑まないで良かったな。この身体に慣れていない時に挑んでしまえば、醜態を晒していただろうからな」


 ストレッチをしながら、ダンジョン内を進む。そろそろ、魔物が出現すると思うが──


「リザァアアアアア!!」


 地面から、1匹の魔物が出現した。

 現れた魔物は、リザードマンだ。

 2メートルを越す巨躯に、筋骨隆々の肉体。


 防具は皮の腰蓑のみと手薄だが、全身をビッシリと覆う紺色のウロコのせいで、防御力が低いとはとても思えない。右手には刃渡り30センチほどのナタを所持しており、黄金の瞳が俺を舐めるように睨みつけてくる。

 

「F級の魔物、リザードマンか。練習相手にはちょうどいいな」


 指を鳴らし、準備を整える。

 この身体では初戦だ。気合を入れよう。


「さぁ! かかってこい!!」


「リザァアアアアア!!」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「リザァ!!」


 先に攻撃を仕掛けてきたのは、リザードマンだった。ナタを片手に、リザードマンは駆けてくる。


「まぁ、F級の魔物なんて、こんなものか」


 リザードマンの速度が遅い。

 杉本と同じかそれ以下の速度で、リザードマンは駆けてくる。


 体感で約2秒後、リザードマンは俺の近くへと辿り着いた。そしてそのままナタを振るってくるが……これも遅い。


「よっ、と」


 ゆっくりと振るわれるナタを、軽く躱す。

 リザードマンは驚愕の表情を浮かべているが……むしろ俺がその表情をしたいものだ。


「まずは俺の十八番を。《上級の焔撃波ブレイズ・キャノン》ッ!!」


「リザッ!?」


 リザードマンに手を突き出し、熱線を放つ。

 ボウッとリザードマンは火に包まれた。

 

「リ、リザッ……」


 焔に包まれ、リザードマンは灰燼と化す。

 ジュワッと鱗は熔解し、肉は焼かれていく。

 F級の魔物に、上級魔法はオーバーキルだったな。


 熱で壁や床が熔解する。

 ドロドロのマグマになっていく。

 ダンジョンは1万度までだったら耐えられると聞いたことがあるので、俺の熱線は軽くそれを凌駕するのだろう。……うん、オーバーキルだな。


「使用に違和感はないな。かつて同様、難なく扱えるな」


 炎系のスキルは普通に使えるようだ。

 俺の有するスキル【氷炎の魔王レイス・ローア】は、氷と炎の魔法を扱えるスキルだ。故にどちらの使用感も、調べなければならない。

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