第56話

ーーー本当は全部全部気づいている。





浴室の女物のシャンプーにリンスなどのアメニティグッズ、ベッドの宮棚に数個置かれた香水。

食器や調理器具だってそう。

淡いピンクや橙色の可愛らしいフライパンや包丁。

ハート柄のマグカップにペアのお皿。


この部屋にはそこかしこに“誰か”の跡が残っている。

――――あたし以外の“誰か”の。


全部分かってる。


理人さんが見ているのは、優しく触れているのは、あたしじゃなくてあたしの奥にいる“誰か”の残像ってことを。


これが七彩が最初に言っていた“あの女”だとか壱さんの言っていた“過去”に関係しているんだろうか。





隠された真相も、切なく締め付ける胸の痛みの名前も、―――――あたしはまだ知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る