昨日見た夢2・つれづれ短編集

ましさかはぶ子

139 80点の彼氏 -レンアイ-



私の彼氏はひいき目でなくカッコいいと思う。

世間的には100点満点で見た目は100点。

少しばかり軟派な感じがするので私的には80点だ。


ちなみに私はごく普通の女で点数で言ったら65点だ。

そんな男と私がなぜ付き合っているのか。

それは遊んでいるゲームが一緒だったからだ。

あいつはゲームが下手過ぎて私は上手い。

コツを教えてくれと言われたのだ。


それでこの前二人で出かけた。


私がちょっとトイレに行っている間に戻ると、

あいつが女の子二人と話している。

彼女らは実に可愛らしい。

私はしばらく離れた所からそれを見ていた。


すると気が付いたのかあいつが私に向かって手を振った。

そして話していた女子二人に何か言うと

二人はえっと言う顔をして私を見た。

そして彼はにこにことしてこちらに来た。


「戻ったんなら声かけろよ。」


彼は私に言った。


「だって楽しそうに話をしていたから邪魔すると悪いと思ってさ。」

「向こうから話しかけて来たんだよ。」

「なんて?」

「暇なら一緒に遊ばないって。」

「それで?」

「彼女が来たから行くわ、と。」

「で、」

「弟さん?と言ってたよ。」


要するにナンパされていたのだ。

それをしらっと話すこいつもこいつだが、

まあこいつのつらを考えると仕方ない気もする。

しかし、弟か。

普段から短髪で今日はMA-1とカーゴパンツを着ている。

男に間違えられても仕方ない。


「まあいいや、早く買い物行こうぜ。」


とあいつはにこにことしながら私の手を取った。


そして買い物だ。

素早くそれを済ますがまたトイレに行きたくなった。

私が少ししてあいつの所に戻るとまた女の人と話している。


ナンパをするのは男性ばかりの感じがするが、

案外と女性も男性に話しかける。

だが女性の場合どちらかと言うと自分に自信がある人が多い。


今彼に話しかけている女性もかなりの美人で着ている物も派手だ。

自分にかなり自信があるタイプだろう。


二人はにこやかに喋っている。

先ほどみたいにしばらく見ていればあいつは気がつくだろうが、

私は早く家に帰りたかった。


「お待たせ。」


私は彼の近くに行くと声をかけた。

すると話していた女性が私を見た。


「え、誰?」


少しばかり胡散臭そうに私を見る。

何かを邪魔された感じだ。彼はちらと私を見た。


「俺の彼女。」

「彼女ぉ?」


女性は素っ頓狂な声を上げて笑い出した。


「嘘でしょ?だっさーい。」


まあ確かにそうだ。否定はしない。

だが彼はにっこり笑うと女性の耳元に顔を近づけた。


「彼女だよ。

初対面の人にそんなこと言わない

たしなみのある女の子だ。」


それは女性と私にしか聞こえなかっただろう。

女性の顔は怒りか恥ずかしさか分からないが真っ赤になり、

背を向けると怒ったようにかつかつと歩いて行った。


私は彼を見た。


「行くぞ。」


いつもと様子は変わらない。


「あの……、」


私は彼を見上げた。


「悪かったな、買い物に付き合わせて。」

「あ、ううん、良いよ。」


彼は前を見た。


「調子悪かったんだろ?腹痛いか?」

「別に、いつもの事だから。お母さんのお土産を選びたかったんでしょ?」

「まあな、久しぶりの帰郷だし。」


彼は私の耳元に顔を寄せた。


「お前に選んでもらったから勇気出た。

助かったよ、きっちり謝って来る。」


私は彼の手をそっと握った。

そして彼も握り返す。


「でさ、俺が女の子と話してた時、むかむかした?」


こいつはすぐにこれだ。


「する訳ないでしょ、馬鹿じゃないの?

そんなつらしているからダメなんだよ。」

「仕方ないだろ生まれつきだし。でもこの顔が好きなくせに。」


あいつは私を見た。


「ば、馬鹿、」


あいつはははと笑った。


「じゃあ帰ろ、家で暖かくしてゆっくりしよう。」


顔だけじゃない、そう言う気を遣う所も、

と私はいつ言えるのだろう。

多分よほどのことが無い限り言えないかもしれない。

顔は80点でも気遣いは100点だ。




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