三枚目興騒局〜俺は3枚目で良いのに……〜

コトプロス

第1話 ラーメン食いに行こうぜ!

1話 


 今日は4月初頭、全国的に出会いと別れの季節。


 高校2年の俺は(ダルいなぁ……(ヽ´ω`))と思いながら、春休みの間ご無沙汰だった通学路をのっそりと自転車をこぐ。


 終業式ぶりの校舎はあいも変わらず俺達思春期のピュアボーイ達を口を開けて待ち構えていた。


 ………ん?なんか校門前に人だかりが出来てるな?転校生ってヤツかな?俺は初めて見るなぁ転校生。


 だんだん近づいて行くにつれて、人だかりの中心に居る男が見えてきた。

 短い黒髪を外ハネさせたチャラチャラした雰囲気で、目が大きく口もデカい。

 顔のパーツハッキリしてんなぁ……アレはモテるだろうな。


 「うーい、ちょっとどいてくれ。」

 

 チャリから降りると人だかりを避ける様にして押して歩く。どうしても人にぶつかりそうになるからちょっと声を掛けて避けてもらう。


「あっ、武蔵山むさしやまだ。相変わらずデカいねぇ。また太った?」


「うるせぇやい!春はたべものって言うだろぉ?」


「春は曙、ね」


 ぶつかりそうになった女はまたイケメンにキャーキャー言う作業に戻って行った。


 「おーい!!武蔵山ってデカいお前ぇ!職員室ってどこ?」


 背後から男の声がする……ちょっと嫌な予感を感じながらもギギギ……と振り返ると人だかりの真ん中に居たイケメンが俺に手を振っていた。


「あー?周りの黄色い声あげてる誰かに連れて行って貰えばい……いやそうだな。お前らイケメンはこれからじっくり見れるんだ!散れ散れ!!」


 なにあの巨漢、デブが偉そうに、もう行こう、そう言いながら幾らかの女子は校舎に入ったが、まだまだ俺の声を無視して何が好きなのか必死に聞き出そうとしてる女子が居た。………ちょっと必死過ぎてこえーよ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


 仕方なく、女子の集団の中に割り込みイケメンを抱え上げると俺は一目散に職員室に向かって走り出すのであった。



◇◇◇




始業式後〜



「いやぁ、今朝は助かった。ありがとうな!!俺は長良涼ながらりょうだ。いきなり囲まれて押し退ける訳には行かずに困ってたんだよ」


 朝の人だかりの真ん中から助け出した男は長良涼と言って、この春から家の事情によりこの町に引っ越して来たんだそうだ。田舎の高校じゃ見ない垢抜けた感じというか、テレビのタレントみたいな雰囲気だから女子の目の色が変わったんだろうなぁ


「大変だなぁモテ過ぎるのも……俺は武蔵山巴むさしやまともえだ。見ての通り食う事が好きで女っけの無い男よ。良かったら帰りに旨いラーメン屋連れて行ってやろうか?」


「本当か?!学校帰りにラーメン屋とかちょっと憧れてたんだよなぁ!」


 俺のセリフに涼は目の色を替えて食いつく。おおう……イケメンが嬉しそうにすると遠巻きに見ていた女子どもがキャーキャー言い出したぞ。


「でもラーメン屋誘った俺が言うのもなんだけど、後ろの女子は良いのか?明らかにお前を待ち構えてるんだが」


「あの娘達は転校生が珍しいだけだろ。動物園に新しい動物が来たら嫌でも注見されるだろうし、同じ様なもんだろ」


 天然鈍感系主人公ですねコレは…………あっ、後ろの女子達が意識されてない事に面白く無さそうにしている………


「じゃあさっさと行くか。」


 俺は席を立つと学校を後にした。涼は「巴が居たら人が集まって来なくて良いな!歩きやすいぜ!」とか言ってた。俺は蚊取り線香かよ(´;ω;`)ブワッ



◇◇◇



御大将ラーメンえっくす 〜



「涼!覚えときな!ここがこの辺りで一番のラーメン屋!その名も「御大将ラーメンえっくす」だ!!一番のオススメはとんこつで、その濃厚さは骨から長時間かけて炊き続けた真心が籠もったスープに独自の配合したスパイスを加えたカエシをコレまた三日三晩店の裏の倉庫で寝かせた物を使用しており奥行き深い味わいを醸し出している!!煮卵とチャーシューは地元の養鶏場と養豚場から直接買い付けたモノを使用して地産地消を体現しつつも、半熟で味付けされた卵は濃厚な味わいで単品でもご飯がイケるシロモノだ!チャーシューに至っては箸で崩れそうなぐらいプルプルでその油がラーメンに染み出す事で少しずつまろやかになる事により食事中に飽きの来ない作りになっている!!さらに付け合わせのからあ…………」


「まっ!待ってくれ巴!!分かった!分かったから店に入ろう!店長さんがこっちをじっと見てる!!」


 ( ゚д゚)ハッ!……つい熱く語ってしまった……ラーメンえっくすの事になると見境がなくなる。私の悪いクセ。


「らっしゃーい!巴はいつものか?隣のもか?」


「御大将!こっちは転校生で今日からこの町で暮らすんだってさ。オススメを食わせてやりたいけど構いませんね?」


「おうよ!そっちのボウズ!初めてなら転校祝いだ!お代は要らねぇからシャイニングラーメンを食らって行きなァ!!」


 オ・ノーレ!と叫びながら厨房でお玉を振り回し始める店長……ゲフン御大将。俺と御大将の勢いに涼は若干押されていたのか微かに笑顔が引きつって居た。

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