Ⅳ-10

約一年後


5月


「起きろ~」


日常、平日の朝


「…おはよう」


「……ん…おはよう」


「え?…睦樹が起きた...」


「…珍しいね、今日は雪かな~?」


「…5月は雪降らないよ...」


「じゃあ雹かな?」


「「ハハハ」」


「僕だってたまには起きるよ...」


「はは、ごめん。

じゃあ朝飯食べろ~」


『はーい。』


――――――――――


登校中


「あ、今日は父さんと母さんの命日だったよな...」


「……うん」


「じゃあ学校終わったら久し振りに墓参りに行こうか」


「「…分かった...」」


「ち~す、しぃくん、さっちゃん、むぅくん!…あ、436だ!」


KY登場。


「…本当は456だ」


「え?…あ、ほんとだ。紗槻は皐月は5月だしね~。

…あれ?睦樹は睦月で1月じゃないの?」


「…いや、六つ+樹でむつき、睦樹だ」


「そうだったんだ~。

…なあ、今日の放課後四人で遊びに行かない?」


KY発言。


「…え」


「…いや、僕はパス、紗槻と睦樹は行っといで」


「…いいの?」


「あぁ。父さん母さんも二人が楽しんでる方が嬉しいと思うぞ」


「「…分かった!」」


「……そっか、今日だったっけ...」


「…気にしなくていいよ。

櫻梛は二人を楽しませてあげて」


「…分かった。

よ~し、さっちゃんむぅくん!

5時まで遊ぶぞ!」


『お~!!』


――――――――――


15時30分…

小屋


「「行って来ま~す」」


紗槻、睦樹、櫻梛が声を揃える。

そして睦樹、櫻梛が早く飛び出した。


「きをつけていけよ~」


「お兄ちゃんもね~。

あ、お土産よろしくね~。

あ、ちょっと二人とも待ってよ~」


そう言って紗槻も出て行った。



…10分後


「…地図も持ったし、行くか。

あ、そうだ。あれを着けて行こう」


詩樹は誕生日に貰った首飾りと指輪を着け、

小さめの鞄を持って出掛けた。



――――――――――


魔法社会 墓地


「…やっぱり久し振りでわかりにくいな。

地図持ってきて良かった...。

んと...、ここか…ん?」


既に花が供えてあった。


「誰か先に来たんだ...」



詩樹は線香と花を供え手を合わせる。


(お父さん、お母さん、久し振り。

紗槻も睦樹もみんな元気で過ごしています。

来月はみんなで来ます。それじゃ。)


ビュゥゥ


「…今日は風がきついな」


詩樹は墓地を後にした。


―――――――――


16時55分

魔法社会


(思ったより時間がかかったな。

あ、お土産買ってくか。)



土産コーナー


(やっぱり食べ物しか無理かな。

どれにしよう……ん?)


詩樹は背中をつつかれた気がして後ろを向く。

すると詩樹と同じ背丈の少女が立っていた。


「…君、誰?」


「…渡邉詩樹だな?」


詩樹の問いに答えず、聞いてくる。


「…そうだけど...、君は?」


「…妹達への土産か?」


また答えずに嘲るように言った。


「ああ、そうだ」


詩樹はイライラしながら答えた。


「…くふふ、ふふふ、買っても意味ないぞ」


「どういう意味だ?」


「くふふ、ふふふ、警告はした。

役立てるも逆らうも好きにせよ、渡邉詩樹」


そう言うと少女は光に包まれて消えた。


「…何だったんだ?

……あ、汽車の時間だ」


急いで改札に向かう。

汽車に乗り、席に着いた時にはもう謎の少女のことは忘れていた。






「くふふ、ふふふ」


――――――――――


科学社会


「ふぅ、着いた」


電車から降りながら呟く。


「…何時だ...、え゛、17時45分...。

もう6時だ」


「お、しぃくんじゃん。お出掛け?」


「あ、夏美先生。今帰ってきたんですよ。

先生は今帰りですか?」


「思ったより小テストの採点に時間とってね~。

じゃ、気をつけて帰れよー」


「は~い、また明日~」


そう言って少し走っていく。


「…いや、明日学校休みだけど!

…大丈夫か?」


夏美の呼びかけが聞こえなかったらしく、

詩樹は振り返らず走っていった。


――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る