Ⅳ-5
翌日朝7時15分
「ほら、二人とも起きろ~」
二人を起こす詩樹。
「ん...、おはよう」
「…もう少し...」
紗槻はすぐに起きたが、睦樹は起きなかった。
「よし、今日の晩御飯はピーマンの肉詰めだな」
「…あれはピーマン嫌いでも食べられる...」
「じゃ、実力行使だ。…てい」
ボスッ
詩樹は二段ベッドの下段へ入り、下から押し上げた。
「うゎ、…起きるから止めて」
睦樹は二段ベッドから降りてくる。
「む~くん、二日連続でその起こされ方だね...」
一回目実行犯が何を言うか。
「さあ、朝御飯15分で食べろ」
『は~い!』
――――――――――
午前7時37分
「準備出来たか?」
「「出来た~」」
「じゃあ、行ぐぉっ」
詩樹が開けようとしている扉が勢い良く開いた。
「三人とも!起き…てるな。
あれ?しぃくんは?」
「「………」」
二人は扉の方を指した。
「へ?」
「……扉は…静かに…開けろ...」
詩樹は扉と壁の間にに挟まっていた。
「あ...。ご、ごめんごめん。
……痛かった?」
詩樹は間から出てくる。
「……途轍もなく」
「あぁあ~。タンコブできて鼻血出てるよ...」
「あと、突き指...」
「…痛そ~...」
――――――――――
「初登校でこれって...」
詩樹は鼻にティッシュを詰め、右手に包帯を巻いていた。
「ごめん...」
「は、早く行かないと遅れるよ?」
急かす紗槻。
「こっから学校まで歩いて何分だ?」
「…20分」
詩樹は時計を見る。
現在時刻7時43分
「…走るぞ」
「「…うん」」
三人は頷いた。
――――――――――
7時52分
学校校門前
「はぁ...、はぁ...、間に合った...」
「この時間に来たという事は、転入生かい?」
見ると校門前に初老ぐらいの男性が立っていた。
「ぜぇ...、ぜぇ...、はい...」
「君一人かい?」
「…え?」
詩樹は後ろを向き道を見た。
数十mの所に三人はいた。
「…あの中の二人もそうです...。
…ところで...、あなたは?」
「ああ、自分はこの学校の校長の
君は…渡邉詩樹くんだよね?」
「あ、はい、そうです」
「あの三人は…紗槻さんと睦樹くんと林櫻梛さんだね?」
「よく生徒の名前を覚えてますね」
「なぁに、
生徒の名前と顔くらい覚えないと失礼だからね」
タッタッタッタッ
「はぁ...、はぁ...、…着いたぁ...」
「ひ…酷いよお兄ちゃん...。
置いてくなんて...」
「校門が…見えた途端...
ダッシュするなんて...」
櫻梛、紗槻、睦樹の順で到着した。
すると、校内から一人歩いてきた。
「校長先生、林さんといるその子達は転入生ですか?」
「…
「…転入生の顔は分かりませんよ。
転入手続きの書類に写真の欄は無かったかと」
「…え?じゃあ校長先生は分かったんですか?」
「ん、自分は君達三人に二度会ってるからね」
「えっ、いつですか?」
「二年前自分がここの校長になった頃に魔法社会の君達の家に招待されたんでね。
一回目はその時だよ」
「何故招待されたんですか?」
「君達の父親の渡邉和樹君と自分はこの学校の同級生でね、
弟の泰彦君と三人でよく遊ぶ仲だったんだ」
「もしかして二度目は...」
「……御両親のことは不幸だったね。
その時に泰彦君に君達を引き取る事を聞いたんだ。
この学校に転入させることを提案したのは自分だ」
「…ありがとうございました」
「なに、気にしなくてもいい。
竹田先生、後は任せたよ」
そう言うと蔭下先生は校内に戻っていった。
「では…初めまして、私は竹田
林さんのクラスの担任をしています。
どうぞよろしくお願いします」
夏美は三人の方を向いて挨拶した。
「…っと、堅苦しいのは無しにして...、
ち~す、桜!」
「ち~す、なっちゃん!」
「変わりすぎ...」
「桜!僕は三人の事分からないから紹介して!」
「りょ~かい!三人は僕のいとこです!以上!」
「短い!ちゃんと紹介して!」
「Yes ma'am!
三人の名前は渡邉詩樹、紗槻、睦樹です。
詩樹は僕と同い年で、…えっと、料理はうまいです?
僕はしぃくんと呼んでます!
紗槻は二つ下で、可愛くていい子です!
さっちゃんと呼んでます!
睦樹は四つ下で、おとぼけくんです!
むぅくんと呼んでます!」
「よろしい!誉めてつかわす」
「ははぁ~」
「二人とも元気だね...」
少し呆れる紗槻。
「…僕だけ性格じゃないし疑問形だし料理"は"だし...」
「こっちは元気ないし...」
「よし!じゃあ三人ともついてきて。桜は教室で待機!」
「はっ!」
櫻梛はビシッと敬礼をした。
夏美先生は校内へ入っていった。
「ほらお兄ちゃん、落ち込んでないでいくよ?」
「…分かった。
…睦樹は?」
「むぅくんならもう行ったよ?」
――――――――――
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