Ⅲ-7
中はワンルームくらいの広さで二人部屋としては狭く感じ、窓際の二段ベッドと隅に小さめのL字の台所しかなく、
小さめのテーブルをぎりぎり置けるくらいの広さだった。
「…せまぁ...」
「………そうか?」
「いや、明らかに狭いだろ。
一人部屋ならギリくらいの」
「………そうか」
(…まず冷蔵庫を出すか...)
詩樹は鞄を少しいじり、台所の近くに置いた。
すると、鞄の側に小さな冷蔵庫が現れた。
「…転送速度が思ったよりも速いな。
それどうしたんだ?」
「………」
詩樹は無視して部屋の中央に、
1×1mのテーブル一つ、椅子二つを転送していた。
(………飯作るか...。)
そして詩樹は台所に立つ。
「普通に無視された...。
あ、飯作るのお前担当な」
「……もとよりそのつもりだ」
――――――――――
20分後...
「…………出来た」
「……お、おぉ...」
テーブルの上に所狭しと並んでいたのは、
ふかふかのパンに彩り豊かな具材を挟んだサンドイッチだった。
「………」
詩樹は無言でサンドイッチを頬張る。
「じゃあ、もらうとするか。」
衛登がサンドイッチを一つ手にとり、頬張る。
それを詩樹はじっと見ていた。
「ん?なんだ?」
「………久しぶりだ」
ぽつりと呟く詩樹。
「何がだ?」
「………誰かと飯を食うことだ」
「ふ~ん。どうしてだ?」
「……四年間一人で生活してたからな」
「えー、家族は?」
「………両親と弟と妹がいた」
「過去形っていうことは…もういねぇのか?」
「………」
「まあ、言いたくなかったら言わなくていい」
「…記憶を読まないのか?」
「ん?ああ。基本的に読まないようにしてるし、
読むときもその時から1時間以内の事しか読めないようにしてる。
しかも視覚と聴覚の記憶だけな。
心ん中も"俺は"読めないようにしてる。
読めたらつまんねぇ時もあるしな」
「……そうか...」
そして二人は黙々とサンドイッチを食べていった。
10分後、二人は全てのサンドイッチをたいらげ、
「さぁて、午後5時まで寝るか。俺はこっちで寝る」
衛登は昼食を食べ終わると、そう言って二段ベッドの上の段に登って寝転がった。
数秒後、鼾が聞こえてきた。
(………本当に神なのか?)
少し呆れながら詩樹は鞄を持って部屋から出て行った。
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