Ⅲ-3
「……はぁ...」
いろいろな事にあきれて大きくため息を吐くと、再び辺りを注意深く見回す。
何があるかは分からなかったが、少なくとも動いているものは無い様だった。
(……普通に魔法を使うしかないか...。
はぁ...)
心の中で今度はめんどくさそうに小さくため息を吐いてから、
「……『魔力探知』」
と小さくつぶやくと、詩樹の足元から薄い半透明の何かが円状に広がっていき、屋上の端まで到達する。
「……見つけた…『ファイア<ball>』」
続けて詩樹は、上に向けた左掌付近から、直径20cmほどの火球を数個発生させて周囲に浮かばせ、四方八方に飛ばした。
そして全ての火球は何かにぶつかるとはじけて消えると一瞬の間の後爆発が起こる。
爆発の跡には様々な何かの残骸が煙を上げて転がっていた。
「………」
それらを確認すると、詩樹は屋上の中央の方へ足を進めた。
…すると、
コツッ、と詩樹の足に何かが軽くぶつかる音がする。
間髪入れず、
「ビー!!!」
という機械音がその場に鳴り響く。
詩樹はその音が鳴るか鳴らないかのうちに素早く横に跳んでいた。
そして一秒もたたずに一瞬前に詩樹が居た場所に爆発が起こる。
(……チッ…不可視魔法だけじゃなかったか。
……光学迷彩系のセンサー爆弾か)
爆風に掠ったのか詩樹の制服に少し煤が付いてしまっていた。
詩樹は軽く服を払ってから、少し体を屈めて左手の平を床につける。
につける。
(……初めからこうすればよかったか)
「……『フレイム<wave>』」
すると、詩樹の周りを囲む様に輪状に炎が立ち上る。
そして波紋のように、炎が屋上全体に広がっていき、見えない爆弾やその他の罠を燃やし、跡には残骸が残った。
「ビー!ビー!ビー!」
再び、扉についている機械からけたたましい音が屋上に鳴り響く。
「ビー!ビー!ビー!
スベテノトラップノ、キノウテイシヲカクニンシマシタ。
ヒョウカニ、ウツリマス……
カイジョニ、カカッタジカン……
ゴフン、ジュウニビョウ。
トラップニ、カカッタカイスウ……
イッカイ。
ソウゴウヒョウカ……
ハチジュウナナテン。
トラップカイジョゲーム、ショキュウヲクリアシマシタ。
ホンジツ、ゴゴ、ゴジハンニ、コノリョウノ、ゴーサンゼロサン、ゴウシツニキテクダサイ。
アイコトバハ、"トラップさいっこ~!"、デス。
オマチシテオリマス」
「………」
…詩樹は再び、はじめと同じように数秒間固まっていた。
最後の方の合い言葉はトラップ制作者の声らしく、かなりテンションが高かった。
「……はぁ...」
色々な気持ちがこもった溜息を吐くとその場に仰向けに寝転がり空を見上げる。
まばらに雲があり、快晴とは言えないが充分晴れていた。
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