Ⅱ-7

「気を取り直して…こいつだ!」


束の真ん中からまた勢い良く一枚カードを引き、今度も黒板に貼り付ける。

しかし今度はカードから光が照射され、村上の右側に大きく立体的な数字の像が映し出された。




そして暫しの沈黙。


「……………あり?…リアクションなしか...」


「…いや…凄いですけど…みんなもう慣れているんでしょう、ホログラムの類は。

魔法社会の私ですら慣れてますし」


「あり?…そうか…(そんなに進んでんだな、この世界は...。)

…て、今の誰だ?さっき茶々入れてきた奴とは違うようだが」


「"茶々入れてきた奴"じゃないですー。春夏ですー」


「…今度からそー呼ぶ。

……で、誰だ?」


ムスッとした声で抗議する春夏を適当な返事であしらい、再び問いかけた。


「あ、はい。私です」


机に突っ伏している奴の後ろの席の女子が手を上げた。


「あ、今度の奴も素直なのな。

…えー…湖南か。それとも円のほうがいいかー?」


「いえ、私はどっちでも。

…なんで村上先生はさっきから学生の名前を確認してるのですか?」


「ん?…ああ、それか。

とりあえず早めに学生の顔と名前を覚えたいからな。

んで、出始めに俺と絡みがあった学生の名前から覚えていこうかなーってとこだ。

…おお!俺って教師の鏡じゃねーか?」


「…最後のがなければ、ですね。

あと、"鏡"じゃなくて"鑑"のほうがいいと思います」


「ん?…あー…そだな。

聴いただけじゃ違い分かんねーけど。

んじゃ、本題に戻して…40番か…渡邉詩樹、スタンダップ!」


大幅に脱線していた話をようやく戻して、村上は先程のカードの番号の学生を指名した。


「………」


指名された黒い瞳、黒髪の詩樹は無表情で窓の外を見ていたが、無言でゆっくりと椅子から立ち上がり、視線を村上に向ける。

(今はさすがに制服をちゃんと着ていた。)


「ん~…何訊こうか…めんどくなってきたから基本的なことで…よし、この世界の魔法の属性と特徴について答えろ」


「……魔法の属性は、基本属性と特殊属性がある。


…基本属性は七種類有り、炎、水、風、雷、土、光、闇。


…特殊属性とは"基本属性を二種類以上を合成したもの"、

"稀に個人が持っている特別な属性"の事を言う。


…基本属性の七種は比較的多くの人が使用可能なため、特殊属性と区分してあるだけで特に大差はない。


…次に各基本属性の特徴だが、

炎は火、水は水、風は空気、雷は電気、土は地面、光は光、闇は重力を操ることができる。

…更に各基本属性からの発展系として――」

「はーい、ストップストップ。

そこまででいーぞー」


更に長く淡々と続きそうな詩樹の説明を慌てて止める村上。

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