第4話 一つ目の試練
鬱蒼とした森の中を進むことしばらく。周りには見たことのない木々が生え、その葉っぱも見たことのない模様を描いている。周囲に漂う甘い匂いも、少しずつ濃くなってきたように感じた。
「なんだか、眠くなってきたんぬ……」
イトーヌが欠伸をしながら呟いた。白い体が、ふらふら左右に揺れている。
「疲れた? 少し休憩しようか」
タケルは、前方に開けた少し広いスペースを見つけた。そこには、柔らかな光を放つキノコが生えており、座るのにちょうど良さそうだ。
二人がキノコの傘に腰を下ろした途端、目の前の景色が突然歪み始めた。先ほどまで見えていた見慣れない森の景色は消え、代わりに、四方を高い本棚に囲まれた、古びた図書館のような場所に変わってしまったのだ。床は埃っぽく、空気には古い紙の匂いが漂っている。
「えっ!? ここはどこんぬ!?」
イトーヌは目の前の変化に飛び起きて、周囲を慌てて見回した。タケルも一体何が起こったのか理解できず、注意深く立ち上がった。
「さっきまで森にいたはずじゃ……」
すると、静寂を破って低い重々しい音が響いた。本棚の奥からゆっくりと姿を現したのは、大きな目をした茶色いフクロウのぬいぐるみだった。体は所々毛糸がほつれ、少しくたびれた様子をしている。
フクロウのぬいぐるみは、2つの大きな目をじっとタケルたちに向け、重々しい声で話し始めた。
「ようこそ、迷い込んだ旅人よ。ここは知識の図書館。前に進むためには、ワシの出す試練を乗り越えなければならない」
タケルは、眼前に現れた喋るぬいぐるみに驚きながらも、慎重に問いかけた。
「試練、ですか?」
「そうだ」
フクロウはゆっくりと首を回した。
「お前たちが探し求めるものは、真実の中に隠されている。真実を得るためには、四つの試練をくぐり抜けなければならない」
イトーヌは、フクロウの威厳のある雰囲気に気圧された様子で、タケルの背後に隠れながらひそひそ声で言った。
「なんだか偉そうんぬ……」
フクロウは、イトーヌの呟きを聞こえなかったかのように、話を続けた。
「ワシの試練は単純だ。ワシが提示する三冊の本のタイトルの中から、お父様が最も好まれたであろう本を選び出すのだ。もし正解できれば、お前たちの進むべき道を照らす手助けをしよう」
そう言い終えるとフクロウの前方に、古びた3冊の本が現れた。
「どうして僕たちの探してるものを知ってるんですか? それにお父様って……」
タケルはいきなり現れたフクロウが話をどんどん進めていくことに困惑していた。わからないことばかりだ。
「ワシがお前の問いに答える必要はない。ただお前が前に進むためには、ワシの問いに答える必要があるというだけじゃ」
フクロウはそう言って黙り込んでしまった。これ以上は何も答えてはくれそうにない。
タケルは質問することを諦め、フクロウの出した問題に専念することにした。
目の前に現れた三冊の本のそれぞれの表紙には、金色の文字でタイトルが書かれている。
*『星の子どもたちの物語』
*『嵐の夜の冒険』
*『静かなる庭の秘密』
タケルは、三冊の本のタイトルをじっと見つめ考えた。
(父さんはどんな物語が好きだっただろうか? 活動的な冒険譚か、それとも心温まるファンタジーか、静かなミステリーか……)
タケルが隣のイトーヌに目をやると、白い犬のぬいぐるみは、困ったように首を傾げている。
(イトーヌは、父さんのお気に入りの本について、何か知っているのだろうか?)
そう考えながら、タケルは昔の記憶を辿る。
(父さんは……寝る前にいつも、僕に絵本を読んでくれたっけ……)
タケルは、幼い頃に父親が読み聞かせをしてくれた時の記憶を辿り始めた。父親の優しい声、ページをめくる音、そして物語の登場人物たちの喜びや悲しみ……。
三冊のタイトルをもう一度見比べる。星、嵐、庭……。
(父さんの性格を考えると……)
タケルは、意を決してフクロウの方に一歩踏み出した。
「僕が選ぶのは……」
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