ゲートキーパー〜副業は異世界の門の管理人〜

月野あかり

第1話 プロローグ

「ユーゴ、午後はなんか入ってるか?」

社長が聞いてくる。


「朝日町の写真を撮ってこようかと思ってます」

「専任受託したやつか、うん、わかった。タマちゃんに頼むわ」


従業員五人の不動産会社じゃ急な雑用が飛び込んでくるのは日常茶飯事。


この不動産会社は、爺ちゃんが作って次男の秀人叔父さんが継いだ。

子供の頃の俺は暇さえあれば頻繁に遊びに来ていた。

仕事のじゃまになりそうなもんだが誰にも嫌な顔をされなかった。

俺にとって会社であり家でもある。


出かけようと準備していると「いらっしゃいませ」と経理の美智子さんの声がする。


「家を売りたいんですけど」


売買は俺の担当だ。出かけるのは一旦中止、名刺を準備する。

美智子さんがお茶を出し終えたのを確認し、名刺を差し出しながら


「いらっしゃいませ。私、主任の一ノ瀬……えっと、間違っていたらすみません。小田様でいらっしゃいますか?」

「はい。よく覚えてましたね」

「ええ、私の最初のお客様でしたから」


十年ほど前になる。入社したばかりのときに初めて一人で対応したお客様。


小田マリさん。

名前のインパクトにも面食らったが、銀髪にブルーの瞳の見た目で、日本人から見ても違和感のない流暢な日本語を使いこなしていた。

見た目も親父の少し上ぐらいと思っていたら、実は婆ちゃんと2つしか違わないと知って驚いた。

これだけの条件が揃ってれば忘れるほうがおかしい。

――実際、彼女が帰ったあとは彼女の話題で持ちきりだったからな。


前回の依頼は、親が亡くなって土地の名義変更だったはず。


司法書士の先生を紹介して終わりの簡単な仕事だったんだけど、遺品の整理や廃品回収の手配とかまでやったんだっけな。社長が苦笑いしてたのは覚えてる。その後すぐに会社理念に「親切親身な対応」が追加されたっけ。


「あの家の売却ですか?」

「ええ」


――確か、駅から離れてるしコンビニもスーパーも遠いんだよな。

需要的にちょっと微妙かな――


「金額はいくらでもいいんですけど、少し条件が」

「条件ですか?」

「ここだと説明しづらくて…」


社長を確認すると軽く頷いてる。


「わかりました。行きましょう」


テーブルのお茶は一度も手を付けられることはなかった。




―――――――――――


あとがき


読み専のわたしの初めての投稿です。

拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです。

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