一匹狼で居たいのに、クラスの一匹狼ギャルが放ってくれない
新原
第1話 一匹狼とは
突然だが、僕こと
誰に縛られることなく、自分の好きなことを、好きなようにする。
マイフェイバリットドラマ?
そりゃもう孤独のグ○メ。
将来は独身貴族を貫きたい。
そんな僕は現状一介の高校2年生である。
気楽に過ごすためにソロライフを貫く日々。
友人はもちろん居ない。
業務的な会話なら誰とでもするが、僕にとって日々のコミュニケーションとはその程度。
煩わしいのは嫌いだ。
無駄に話を広げて他人を深掘りし、あるいはこちらが深掘りされ、共通点なんて見つけ出した日にはめんどくさい。
だから他人との会話は必要最低限にとどめる。
そんな僕のソロライフは、もちろん誰にも邪魔させるつもりはない――。
※
「――なんで高校生にもなって学級新聞書かなきゃならんの~?」
さて、ひと月半くらい前に高2へと進級した僕だが、運の悪いことに学級委員の男子代表になってしまった。
立候補者ナシゆえのクジ引きの結果だ。
誰か立候補しとけという話である。積極性無さ過ぎだろ。僕が言えた義理じゃないけど……。
学級委員は放課後に週2、3のペースで何かしらの雑務がある。
かったるいったらありゃしない。
本日も記念すべき雑務Day。
仕事内容はと言えば――、
「学級新聞作りとかだる過ぎ~」
さっきから僕の正面で聞こえる嘆きの通りだ。
高校生にもなって学級新聞を書かされる。
ホントにダルい。
誰が読むんだこんなの。
「じょーもんもだるいよね~?」
「あ、うん、まあ……」
名前を呼ばれたので薄く反応。
同調を求めてきたそいつが誰かと言えば、クラスメイトの
僕の片割れというか、要は女子サイドの学級委員だ。
僕と違って立候補したヤツだが、内申目的だそうで業務自体は好きじゃないらしい。なので業務中は大体いつも嘆いている。
そんな福磨の容姿はひと言で言うならギャルだ。
ステレオタイプな金髪ではない。
黒髪をウルフカットにしていて、右耳にピアスをあけている。
性格は多分ダウナー。
気怠そうにいつもあくびをしている。
あくびの際に口元を覆うくらいの品の良さはあって、その手元は制服の長袖ニットで覆われ萌え袖みたいになっている。
そんな福磨は間違っても陽キャじゃないのだけは確かだ。
かといって陰キャなのかも曖昧だけれど。
ひとつ言えることは可愛い。
男子人気は高い。
去年も同じクラスだったから、色々言い寄られているのを見ている。
でも意外にも僕と同じ一匹狼タイプのようで、たとえ告白されても100%お断りしているらしい。
友人も皆無だとか。
まあ僕に言わせればちょうどいい女子だ。
一匹狼同士、流儀を分かっている。
無駄に踏み込んでこないのが助かるというヤツだ。
「ねえじょーもん、これって締切いつだっけ?」
「今週中だったような」
「え、今週ってもうないじゃん」
そう、今日はもう金曜日だ。
「今日で出来なかったらどうなんのコレ?」
「確か土日で作ってこい、って話だったような」
「だる~……」
背もたれにふんぞり返り天を仰ぐ福磨。
「ま……そうなったら僕が引き受けるよ」
このペースだと土日に無駄な労働が挟まるのは確実だろう。
そしてそれを押し付けるか引き受けるかで言うなら、僕は引き受ける。
福磨に押し付けたら土日のソロライフの寝覚めが悪くなる。
だったら自分で引き受けてしまった方が精神衛生上は良い。
2人でやる、という選択肢はない。
だって僕は気楽にソロで作業がしたいから。
「ちょい待ち。なんでじょーもんが勝手に引き受ける流れになってんの?」
「なんだよ、福磨がやりたいのか?」
「やりたいっていうか、2人でやる選択肢は?」
「ない」
「どーして?」
「僕と同じく人付き合い捨ててる福磨なら分かるだろ。その方が気楽だ」
「確かにね。でも一緒にやろーよ」
「な、なんでだよ」
「あたしとしてはじょーもんに押し付けたら寝覚めが悪いし、じょーもんが1人でやったらあたしの内申に影響出るかもだし」
「な、なら福磨は手伝った扱いでいいから……」
「それはそれで悪いじゃん。てなわけで、じょーもんちの住所おせーて?」
「え……?」
「明日じょーもんちで一緒に残業するから」
心のエマージェンシーコール、発令。
福磨は同類のようで同類じゃなかったらしい。
僕が福磨の立場だったら喜んで僕にお任せして週末のソロ活を満喫するのに……。
……思いのほか気遣い屋さんなタイプだったか。
「ホントに来るのか……?」
「もち」
「……一匹狼なのに?」
「たまにはほら、群れたくもなるじゃん」
まぁ……分からんでもない。
ワイワイ騒ぐ陽キャたちを見ていると、バカみてえにうるせえなと思う一方で、僕にはないモノを持つその光景がどこか羨ましく思える。
そう、つまり「うるせえな」と貶す心理は、裏を返せば嫉妬なのだろう。
それでも僕は1人で過ごす気楽さを優先するけれども。
だけど今回みたいな残業のときくらい、それを大義名分として群れてみるのはアリなのかもしれない、なんて魔が差したがゆえに――
「……分かったよ」
僕は気付けば折れていた。
どうせ今回だけだし、と思いながら。
1回ポッキリのお宅訪問くらい、残業を早く終わらすために甘んじて受け入れておけばいい。
それっきり福磨がウチに来ることは二度とないだろうしな。
「ほら、僕んちはここだ……このマンションの304号室」
「ほうほう。じゃあ明日の朝10時には行くようにしとく~」
スマホで地図を見せて、返ってきた返事がそれだった。
どことなく楽しげな表情に見えたのは、多分気のせいだと思いたい。
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