第24話 買い物

「了。ミコからのラインで十時くらいには着くそうよ」


「本当に一晩で戻って来るんだ」


 実子さんからなら凛子さんが運転しているんだ。昨日、凛子さんが運転してなかったっけ?


「運送業並みの移動ですね」


 運送業を知らんのでなんとも言えんが、こうして長距離運転してわかる。百キロ走るのも疲れるもの。秋田まで約三百キロ。往復で六百キロ。よーやるわとしか言えないよ。


「二人が来たら食事にするか」


 まだ店も開いてないし、先に食べるのも申し訳ない。二人が来てから食事にするとしよう。


「了って馬肉食べたことある?」


「馬肉?」


「会津は馬肉が有名みたいよ」


 道の駅で仕入れた情報誌に載っていたようだ。


「ないかな~。食べるところもなかったし」


 冷凍食品とコンビニの弁当だけが友達だったのでな。


「わたしはあります。馬刺しは美味しいですよ」


「へー。馬肉って生で食べられるんだ」


 それは知らんかった。美味いなら食ってみたいもんだ。


「じゃあ、馬刺しを食べに行くか」


 どこにするかはルーシャと矢代さんにお任せ。どんなもんか知らんしな。どこでもいいよ。


「九時だから店を見て来るよ」


 一晩お世話になったのだからお金を落とさせてもらおう。なんだかんだと美味しいものが揃ってんだよな、道の駅って。


 道の駅で捨てられるのは捨てさせてもらう。なんだかんだてゴミが溜まるんだよ。缶と燃えるゴミを捨てさせてくださいませ。


「わたしも行く」


「わたしも」


 女性だからか、二人とも買い物をするのが好きだったりする。オレは毎回荷物持ちをさせられてますがな。


「やっぱ土曜日は混みますね~」


「昼になったら大変そうだ」


 まだ開店したばかりだからそれほどじゃないが、米沢の道の駅は昼前から凄い混雑だったっけ。


「会社にお土産買わないと」


「喜多方でも買ってませんでした?」


「あれは酒のツマミにしちゃいました」


 よー食べてたもんね。なくなっても仕方がないね。オレもいただいて食ってたし。


「福島の名物ってなんですかね?」


「昔、会社の同僚に粟饅頭もらったことありますね」


「あー聞いたことあります。萩の月は宮城でしたっけ?」


 なんてことをしゃべりながら福島っぽいお土産をカゴに入れていく。あ、喜多方ラーメンも買っておくか。煮るだけのものはすぐ食べれるからな。具はスーパーで買えばいい。


「了。着いたらしいわよ」


「それならオレが行って来るよ。どこにいるって?」


「トイレの前にいるそうよ」


 カゴを渡してトイレの前に行ってみると、魂が抜けたような阿佐ヶ谷妹と元気な阿佐ヶ谷姉がいた。


「お疲れ様です。一睡もしてない感じですか?」


「ええ。若いって羨ましいわ」


 いやあなた、まだ二十七歳ですよね。オレからしたらあなたも充分若いよ。


「眠いならキャンピングカーで寝ますか? これからちょっと早めの昼にしようと思っているのですが」


「ごちそうになります!」


 疲れより眠気より食欲な阿佐ヶ谷妹。若いって羨ましいよ。


「でも、お風呂にも入りたいです。てか、もう着替えがない」


「人間、一日二日はいらなくても死なないわよ。わたしなんて一週間入らないこともあったわ」


 それは人としてどうなんだ? 死ななくとも人としての大切なものを失くしているよね?


「わたしは毎日入りたい派なの」


「それなら昼を食べたら風呂に行くといいですよ。その間、オレらはホームセンターに行って来ますんで」


 別に買い物まで付き合う必要もない。大江戸温泉物語で待っててくれても構わんだろうよ。


「はい、それでお願いします!」


 ルーシャや矢代さんが戻って来たら車を道の駅の後ろに移動してもらい、どこで食べるかを相談する。


「坂下のほうにあるドライブインで食べれそうですよ。十一時開店だから途中のホームセンターで買い物しましょうか」


 ってことで鶏マークのホームセンターに出発。家で必要なものを買って行き、魔法の鞄に入れていった。


「便利ね、それ。わたしも欲しいわ。難しいものなの?」


「魔力があればそう難しくないわ」


「お礼はお酒でいいかしら? 実家にあったゆきの美人っていう日本酒を三本ばかりもらってきたの。うちのお父さんが気に入っているものなのよ」


 絶対、許可を得てないものだ。短い時間だが、阿佐ヶ谷姉の性格は把握したからな。父親、可哀想すぎる。


「任せて」


 ちょろいな、ルーシャは。てか、阿佐ヶ谷姉もルーシャの性格を把握しているよ。わかってて持って来たんだろうよ。


「ルーシャ、まだ入るか? 布団も買っておきたいから」


 借りた家にはオレが使っていた布団しかない。マットレスもないから買っておきたいのだ。


「全然余裕よ」


「それなら服もついでに買っておくか。今なら心強い味方もいるしな」


 すぐ近くにしま○らがある。その間にオレはコインランドリーに行って来よう。もう結構な量が溜まってんだよ。


「じゃあ、二手に別れましょうか。わたしもコインランドリーに行きたいので」


 コインランドリーはオレと矢代さん。しま○らにはルーシャ、阿佐ヶ谷姉妹で行くことに。終わったらドライブインで落ち合うことにした。

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