20xx年5月26日

アオイが装置を握りしめると、まるで空間が彼の周りで縮み、圧縮されるような感覚が走った。手に伝わる冷たさが次第に強くなり、彼の指先から全身にかけて、未知のエネルギーが駆け巡る。光の渦の中で、アオイは言いようのない力に引き寄せられ、次第に意識が遠のいていった。


突然、空間が引き裂かれ、時が止まったかのように感じられる。周囲の音も、呼吸すらも感じられなくなり、アオイは何も見えない闇の中に落ちていった。そこにあるのは、ただの静寂。だがその静寂の中には、確かに「何か」が潜んでいた。


「どこだ…?」アオイは声を出すことすらできず、ただ呟いた。しかし、彼の声は虚空に吸い込まれていった。


しばらくして、闇の中からかすかな光が現れ、アオイの目の前に現れたのは、またあの存在だった。未来の支配者、その冷徹な眼差しでアオイを見つめている。


「君は、これを理解しているのか?」未来の支配者が声を発した。まるで無機質な機械のようでありながら、その言葉の奥には計り知れない威圧感が込められていた。


アオイは少しだけ躊躇したが、すぐに自分を奮い立たせた。「理解している。選択の重さも、これから進むべき道がどれだけ険しいかも…でも、俺はもう迷わない。」


未来の支配者は無表情のまま頷き、「君がそう言うならば、ならば試してみるが良い。」そう言って、手をかざした。


その瞬間、アオイの周囲に次々と映像が現れ始めた。それは過去の出来事、そして未来の予知。何が起こったのか、何が起きるのか、そしてその先に待っている試練のすべてが、彼の目の前に浮かび上がる。


「これは…?」アオイはその映像に圧倒されながらも、冷静さを保とうとした。しかし、その映像の中には、信じがたいものが映し出されていた。


それは、かつてアオイが知っていた世界ではなかった。街が荒廃し、人々が互いに争い、破壊の連鎖が続く光景。そこには、アオイがこれまで見てきたどんな敵よりも、強大で恐ろしい存在が立っていた。


「これが…未来?」アオイは目を見開いて、現実感がないその光景に呆然とする。


「君が選ばなければならない未来だ。」未来の支配者は言った。「君が進む道によって、この未来は変わる。しかし、どの道を選んでも、その結果に抗うことはできない。君はどこまでこの未来を背負うつもりか。」


アオイはその言葉を聞き、しばらくの間沈黙していた。しかし、彼の目は揺るがなかった。選ばなければならない道は一つだということを、彼はすでに理解していた。


「どんな未来だとしても、俺は背負って進む。」アオイは言った。その目に迷いはなかった。どんな恐ろしい未来が待っていようと、彼はその先に進む覚悟を決めた。


未来の支配者は静かに頷き、「ならば、その覚悟を証明しなければならない。」と言って、手をかざした。すると、周囲の映像が歪み、次第に変化していった。


「試練が待っている。」未来の支配者は、アオイに向かって低く言った。「君が選んだ道が、どれだけ辛くとも、それを乗り越えた先にこそ、新たな未来がある。」


その言葉が終わると、アオイの周囲に再び光が現れ、彼を包み込んだ。次に気がつくと、彼は元の世界に戻っていた。しかし、何かが違っていた。空気の密度、時の流れ、すべてが変わったように感じられる。


そして、遠くの空に、巨大な影が見えた。それは、アオイがこれから戦うべき存在の兆しであり、彼が選ばなければならない運命の化身だった。

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