第1話

「いやぁ~、今日はよく晴れてる! かなりすがすがしい気分! ね、シルヴィオ?」

ユリアーナ・ファン・レイデンは双子の兄のシルヴィオに同意を求めた。


ユリアーナは15歳の少女で、黒と紫の混ざったサイドツインテールをしており、白く透き通った肌をしており、やや童顔である。両耳からは小ぶりな涙型のピアスをつけている。


「おい……、眩しいだろ……。 昨日夜なべしたから眠たいんだよ……。」

シルヴィオ・ファン・レイデンは眠そうな声でそっけなく返した。


シルヴィオはユリアーナと同じく15歳の少年で、黒と紫が混ざった髪色をしており、ボブヘアーをしている。ユリアーナより少し背が高く、比較的落ち着いた印象を与えていた。


「ネーデルって、平原の国だからよく太陽光が入るんだよな……。」

シルヴィオはベッド上でぼやいた。





エウロペ地方中部部に位置する小国、ネーデル王国。

かつてここは『闇魔術大国』として栄えた。ほかの国とは違って教育課程に闇魔術が入るなど、闇魔術に対して積極的な姿勢を見せていた。


特に双子の兄弟であるアルフレッド&マクシミリアーン・ファン・レイデン率いるレイデン家は、平家からたった闇魔術のみで国一番の名家の一つまで上り詰めた。ネーデルは彼ら筆頭にもっと闇魔術の国として栄えると誰もが思っていた。


だが、それが変わったのは『サタン』の一件である。

サタンの影響はネーデルも例外ではなかった。この国のみで28万人が犠牲となり、闇魔術に対する恨みも強まっていった。


サタンなき後も、闇魔術に対する恐怖が募っていき、ついにエウロペ地方全体で『ダーク・パージ』なる闇魔術排除運動が強まり、大量の闇魔術師が廃業した。


ネーデルもサタンの一件前では国民の96パーセントが闇魔術師だったのが、今や2パーセントまで縮小してしまった。


レイデン家も差別や抑圧から力を失い、ただ過去の栄光を映す豪邸しか彼らには残っていなかった。



「もー、夜更かしはだめだよ」

ユリアーナはシルヴィオを叱った。


「はぁ……、来週はあの『スウィッツァー国立魔法学校』の入学試験だぞ……? お前、何の予習もしてねえじゃねえか。」

シルヴィオは目も合わせず反論した。


「いいの!私たち魔力はそこんじょそこらの人よりうーんとあるんだから!」

「でも俺らは闇魔術師だ。 どんな不当な扱い受けるかわかったもんじゃないぞ?」


ユリアーナは黙り込んでしまった。


サタンが討伐されて200年経った今でも、闇魔術師に対する偏見は収まらなかった。

国によっては政府がそれを先導し、命を狙われるケースもある。


加えてエウロペ地方の精鋭たちが集まるスウィッツァー国立魔法学校の人間が皆が皆平等な目をしているとは限らない。


するとシルヴィオはユリアーナはの方を見た。

ユリアーナの顔は曇っていた。



「二人ともー!」

扉の奥から声がした。母エミリーの声だ。


エミリーは扉を開けた。エミリーは髪を後ろに結っており、おおよそ彼ら含め3人を生んだとは思えない若々しさを保っていた。


「二人でいつもの中心街の方に行ってリンゴと砂糖、買ってきてくれない?」

するとエミリーはバッグを取り出した。


兄妹はお使いを嫌がった。

「えー? やだよ!母さん自分で行ってよー!」

「今、ほかの料理作ってるから無理よ。昔は専属シェフさんがいてくれたからどうにかなったけど、今は私が厨房に立っとかなきゃいけないのよ」


するとユリアーナはシルヴィオの方を向いた。

「……じゃあ、シルヴィオ、あんたが行ってよ!」

「バカ言うな。今僕は予習中なんだぞ」


するとエミリーは二人にカバンを押し付けた。

「ほら、早く!二人とも行ってきなさい!」


「「えぇ~?」」

二人は双子らしく同タイミングで文句を垂れた。




その後二人は互いに文句を言いながら中心街へ行った。


ネーデルの首都・アンシュターデンにある中心街は、国一番の盛況を見せる市街地で、数千を超える店が様々な物を売り捌いている。



「……しかし、本当に今日は晴れてるな。」

シルヴィオが太陽に手をかざしながら仰ぎ見た。


「ほんとだね~ 冬の寒さが終わってこれから暖かくなるでしょ! アタシ春だ~いすき!」

ユリアーナはルンルン気分で言った。


「……僕は嫌いだよ。花粉キツいから。」

シルヴィオが嫌そうに答えた。


「アタシ花粉平気だよ」

「全く……、なーんで双子で変な格差出てるかなぁ……」

シルヴィオは歩きながら頭を悩ませた。


するとユリアーナはあっ、と声を上げて店の一つに駆け込んだ。


「すみませーん!リンゴ5つと砂糖150gくださーい!」

ユリアーナは元気に店員に言った。


「あいよ!」

店員は気前よく返事し、リンゴと砂糖を手際よく袋に詰めた。


ユリアーナはありがとうございます、と言って店を後にした。


だが、周りを見渡すとシルヴィオの姿はなかった。

「……あれぇ? シルヴィオどこ行っちゃったんだろ…?」


するとその時、奥の道から怒鳴り声が聞こえた。

「邪魔だクソガキィ!」


怒りのこもった男の声。ユリアーナは声のする方を見た。


「……あっ!」

そこには、厳つい男とその男に右腕をガッチリ掴まれている女性、そして男と言い合うシルヴィオがいた。


「シルヴィオ、何してるの……!?」


――――――――――――――――――――――

☆キャラクター紹介


〇シルヴィオ・ファン・レイデン

主人公。双子の兄。冷静でおとなしい性格をしている。


〇ユリアーナ・ファン・レイデン

主人公。双子の妹。明るく天真爛漫な性格をしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る