1-23.街道の遭遇戦(前)

少しずつ空が青から赤に転じ始めた夕方。

ダクエスたち一行の馬車はルネガ渓谷を発ち西部北岸の街タレマスに向けて進んでいた。

先行した王国軍の騎兵と一般人たちの馬車を追いかける形であるが、気持ち急ぎ足なのは前の一団に追いつきたいからではない。

日没前にタレマスに入る為だ。



「ようやくタレマスか。日没前に着けるかな?」

「この調子で進んで行けば着くじゃろうよ」

「それなら良いんだが・・・討伐完了して一安心って所だが、残りの巡回に向けて今夜は寝台ベッドで疲れを取りたいぜ」

「ほう、お前さんから飯以外の話が出るとは珍しいな。じゃが寝台で寝ても落っこちるではないか」

「うるせえっ」



馬車の荷台でロスエンとミーベクが交わした会話に他の人員メンバーが笑い声を発した。

この時の配置は前席にダクエスとナジエ。

後席に残りの四人で後方の見張りはラウシェが行っている。


魔力治療と水薬ポーションですっかり治ったとは言えルネガ渓谷で負傷したダクエスに馬車を走らせてもらうことには意見が分かれた。

ナジエとラウシェは反対したがロスエンとミーベクは賛成した。

賛成の理由はあまり過保護に扱うとダクエスが負い目を感じ過ぎて良くないと言うものだった。


これにラウシェとユウィネが納得した。

あまり気に病まれては今後の探索者活動によろしくない影響を残すことも考えられたからだ。

ナジエだけは最後まで反対したが、ダクエスから“隣に座ってもらえますか?”と頼まれると賛成せざるを得なかった様だ。



(随分と懐いたもんだね)



ロスエンとミーベクの会話に耳を傾けながら。

ユウィネは前席にいるナジエの後姿を見つめた。


声を失った人は王国のあちこちにいる。

だが声を失った人が探索者になるのは珍しい。

そうした中、ナジエはめげずに頑張って来た。

彼女が何を言いたいのかわからなくて周囲が困った時、彼女自身は困るだけでなく傷ついていた。

それでも探索者になると決め諦めなかった。

大したものだと思う。


確かにユウィネも最初の頃はナジエと上手く意思疎通出来ず大変だった。

しかし、ユウィネは思った。

“この子が探索者になったら頼もしい”と。

片刃剣と弓を巧みに使い分け氷魔力の扱いに長け、俊敏な身のこなしが出来る。

共に鍛えて来たからこそナジエの探索者としての強さをユウィネは最も理解していたと言えるだろう。

当初の“この子と探索者になりたい”と言う想いは今では“この子以外組める相手はいない”と思う程に信頼している。


そんな彼女の相棒は近頃ある人物に夢中だ。

ユウィネが横に視線をずらすとその人物の後姿が見えた。

ダクエスと言う名の地人族の彼は実に好青年。

ユウィネ自身も彼の礼儀正しさ、丁寧さ、真面目さ、そして周囲への思いやりの姿勢に好感を抱いている。

だがナジエが彼に夢中である最大の理由は意思の疎通が可能な点が大きいだろう。



(本当にどう言うアレなんだろうねぇ・・・)



六年前の大魔嵐の生き残りである二〇歳の男性地人族。

今回が卒業依頼の新人探索者で魔力使いだが属性持ちではないし特別秀でている訳ではない。

得物も特注ではあるがこれと言って代わり映えの無い普通の剣。

それがこれまで話してわかった彼の基本情報だ。

精々が彼の為人がウェスタビア人には珍しいことくらいで能力的にも実績的にもこれと言ったものはない。

だと言うのに彼は何故か無言無表情のナジエとかなり円滑な意思疎通が出来ている。


日常生活において伝えるのに苦労しているナジエにとって円滑に意思疎通が出来ることがどれだけ嬉しいか。

依頼に置いても今まで以上に連携することが可能になるだろう。

そう思ったユウィネは二人のやりとりを観察して手掛かりを探したがこれまでに収穫はない。



(いっそ次の依頼も誘ってみようかね?)



この先、同じ様な人に会えるとはとても思えない。

ならばもうしばらく一緒にいて何とか手掛かりを見つけたい。

その為にも今回だけでなく次の依頼も誘おうかとユウィネは考え始めていた。

ナジエもあの様子なら反対することはないだろう。



「前方に異常あり!」



ユウィネが思考に耽っていると彼女が見つめていたダクエスが突然声を発した。

それに合わせて振り向いたナジエと視線が合った。

ダクエスの声もナジエの表情も硬いと感じた。



「何事だい?」

「前方、街道の先から赤色の光が見えます。それと先ほどから野獣の姿も気配も急になくなったとナジエさんが」



馬車内に緊張が走った。

赤色の光と言えば近頃色んな馬車に取り付けられつつある発光石を用いた緊急信号である。

そしてナジエが野獣がいないと言っている。

考えられる事態は一つ。

魔物だ。



「この状況で緊急事態となると魔物の可能性が高いですね」

「おいおい、王国軍の騎兵も一緒の筈だろう?大丈夫なんじゃねーか?」

「ああ・・・でもこの際だから悪い事態を想定して備えた方が良いだろうね。着いて大したことなかったらそれはそれで良いし」

「ワシもユウィネに同感だ。新手の魔物が出たと想定しよう。王国軍もいるのだから戦闘中と考えるのが妥当か・・・そうなると一般人を救助しながらの戦闘じゃな」



動揺しながらも後席の四人が言葉を交わし対応を決めて行く。

流石は経験豊富な中堅探索者たちと言った所だろうか。



「馬車が見えました!・・・停まっている馬車の周囲に何かいます!」

「ダクエス、適当に停めておくれ!」



程なくしてダクエスが追加の情報を報せた。

それを受けてユウィネが停車を頼むと馬車が揺れた。

街道の脇にそれた弾みである。


その揺れが収まると馬車の停車を待たずして四人がほぼ同時に立ち上がった。

そして停車と共にラウシェ、ミーベク、ロスエン、ユウィネの順に素早く降車。

最初に降りたラウシェが周囲に気配なしと報告すると四人で馬車の前方へ。

前から降車し弓を構えているナジエと合流する。



「先に行きます。ダクエスくんは手筈通りお願いしますね」

「はい!」



ラウシェが声を掛けるとダクエスが馬車を進ませた。

彼はすぐに移動出来るように馬車の向きを変えてから後続する。


ここまで彼女たちの動きが素早いのは彼女たちが経験豊富と言うこともあるが予め何かあった際の対応を決めておいたからでもある。

緊張した面持ちで声を硬くしながらもダクエスが迷わず行動出来ているのもそれが理由だ。



「行くぞ」



ロスエンがそう言うと先頭に立った。

その後にミーベク、ラウシェ、ユウィネ、ナジエの順に続く。

まずは縦隊で現場に接近。

その後は状況次第と言うことになるだろうがロスエンとミーベクを最前衛にラウシェとユウィネが直接援護し、ナジエが弓で支援することになるだろう。


五人が街道脇を手際良く前進していくとそれまで見えていた赤色の光が見えなくなった。

近づいたことで発光石の発光範囲から外れたのだろう。

これで馬車の様子が良く見えると思ったがそうは行かなかった。

既に夕方で森の木々に夕陽が遮られ街道は暗くなり始めていたからだ。


それでも前進を続けていると五人は嫌な予感がした。

静かすぎるのだ。

戦闘音も悲鳴も聞こえてこない・・・。



「・・・なんだアレ」



先頭のロスエンが呟くと停止した。

何か見つけたらしい。

姿勢を低くしながらロスエンの周囲に集まると彼が指を差した。

その先へ視線を向けると見たことのない生き物の姿があった。


見える限りで二体。

暗くてよくわからないが色は暗めの青か緑だろうか。

四本足に二本の腕を持ち口は細長い。

腕の先には鋭い爪が三本から四本。

爪だけでなく細長いあの口は噛みつきに注意が必要だろう。

それとレザドよりも身体が大きいから体当たりや踏み潰しも厄介だ。

よく見れば眼は三つ。

そしてその眼が魔物特有の水晶の様なものだからアレは魔物で間違いない。



「俺が知っている魔物には見えねえな・・・ミーベク、どうだ?」

「・・・レザドの変異種とかでもなさそうだの。魔物化した獣とも思えんが」

「まさかとは思いますが希少種の可能性も考慮すべきでしょう」

「厄介だな」



どうやら誰も知らない魔物らしい。

そうなるとロスエンが呟いた通り厄介だ。

特徴も能力もわからない以上、迂闊に仕掛けられない。


その魔物が道に停車している三台の馬車の傍にいるが、暗くて馬車の様子がよくわからない。

だが明らかに戦闘はしていない。

馬車の連中は逃げたのか、それとも殺されたのか。

逃げたのであれば下手に騒ぎを起こすと危険な場合もある。

手遅れだったとしてもまだ息のある者がいるかもしれない。

だとしたら早めに仕掛けるべきだが・・・。


そこへ最後尾の馬車の中から魔物が出て来た。

細長い口に“何か”を咥えているその個体は馬車を降りると五人へ視線を向けた。

“気づかれた”と思った時には既にナジエが矢を放っていて。

それに続くように他の四人が駆け出していた。


直前に気づいたからか魔物はナジエの矢を避けていた。

どうやら咥えていた“何か”を落とすことで身軽になって回避出来たらしい。



「っ・・・!」



咄嗟とは言えナジエの弓矢を避けたことで四人は魔物が“手強い”と警戒した。

その直後、四人は魔物が落とした“何か”の正体に気づき目を瞠った。


魔物が咥えていたのは人だった。

しかも何処か見覚えがある水人族の女性。

それは行商兄妹の妹テオラだったのだ。

彼女は意識を失っており腹部は赤く染まっていた。



「グギュオオオオッ!!」



怒りが込み上げてくる中、矢を回避した魔物が耳障りな鳴き声を発した。

他の個体が一斉に接近する四人に顔を向けた。

更に二体が加わり合計で五体だ。

新たに姿を現した二体も人を咥えていたがその場に捨てるように離すと四人に対抗する様に駆け出した。


魔物は人を殺す生き物だ。

人を食べることはないし甚振ることもなくただ淡々と殺しにくる。

その魔物が人を咥えていた。

何の為に?

そう疑問が浮かんだが振り払った四人は自然な形で陣形を組んだ。


ロスエンを先頭にその後ろにミーベク。

二人にやや遅れてユウィネが右、ラウシェが左だ。

魔物は三体がロスエンたちに。

残る二体は一体ずつそれぞれユウィネとラウシェに向かって来る。


四人が得物に魔力を込め始めると追い抜くようにナジエが放った矢が飛んで行く。

中央の三体が一本ずつ受けるもすべて避けられた。

レザドより大きな体躯なのに俊敏な様だ。

或いは三つある眼で正確に矢の動きを捉えているのか。

しかし、回避行動を取ったことで魔物たちの足並みが乱れた。



「なにっ!?」



その隙を突くようにロスエンが斬りかかったが魔物は彼の剣をまともに受け止めた。

魔力使いのロスエンの一撃を受け止めたと言うことは相当に硬い爪を持っているらしい。

後続の三人はそう思ったがロスエンが驚いた理由は別にあった。



「こいつ属性持ちかよ!?」



そう言いながらロスエンが後ろに跳んで間合いを取る。

すると魔物とロスエンの間に氷の欠片が宙を舞った。

上に飛びあがった欠片は夕陽に照らされ輝いた。

それによって三人はロスエンの剣を受け止める際、魔物が“氷の防壁”を張ったことに気づいた。


魔物が形成した氷の防壁はロスエンの剣に容易く打ち砕かれた。

しかし、剣の勢いを削がれた為に爪で難なく受け止められてしまったのだ。

だが受け止める為に魔物が足を止めた所を横に回り込んだミーベクが斧を叩き込んで倒した。

ナジエの矢を避けた割にはやや拍子抜けする倒れ方だったがこれでまずは一体。


中央の残る二体が突出したミーベクを挟み込もうとした。

しかし、それぞれの側面をユウィネとロスエンが突く。

どちらの魔物も自分に迫る二人の動きに気づきミーベクを挟むのを止めてその場で方向転換する。

その為に停止したことで生じた隙をナジエが見逃さなかった。

好機と判断した彼女はそれまでの牽制ではなく確実に損耗させる為に氷魔力を付与した矢を放った。

それを受けて鈍化した所にユウィネとロスエンが斬りかかる。


氷魔力の矢によって身体が冷え込み鈍化した二体の魔物は回避どころか防御姿勢を取ることも間に合わず。

それぞれ斬撃を受けて倒れ込んだ。

その間にラウシェも彼女に向って来た個体を倒し、残るはユウィネに向かっていた一体のみとなった。

驚くことにその一体は形勢不利と見たのか突っ込まずに停止した。



「レザドよりは強いみたいだが、これなら問題ねぇな!」



まるで怯んだ様な魔物の姿にロスエンが息巻きながら接近しようとした。



「ロスエンさん、左です!」



だがそこへラウシェの注意喚起が届く。

ロスエンは咄嗟に横へ転げた。

すると新手の魔物が馬車の陰から飛び掛かって来たのをぎりぎりで回避することとなった。


新手はその一体だけではなかった。

ロスエンが転げた先の街道脇の茂みから別の一体が飛び出て来て起き上がる前の無防備な彼に襲い掛かる。

これは咄嗟に気づいたミーベクが割り込んで防いだが、更に別の一体が近くの木から飛び掛かって来てミーベクの横を通り抜けてロスエンに迫った。

しかし、今度はナジエの放った矢が命中して勢いが弱まり、そこに起き上がったロスエンが剣を突き刺して倒した。



「あっぶねぇ・・・すまねぇ、助かったぜ!」

「新手じゃ!まだまだおるぞ!」



仲間の援護のお陰で何とか切り抜けたロスエンが安堵と共に礼を口にしたがミーベクが声を上げた。

彼の言葉通り次々と魔物が姿を現した。

すべて三つ目に口長の魔物であっという間に一〇体を超えまだまだ増える。



「どんだけ増えるんだい!?」

「数の差が広がり続けるだけだ、仕掛けるぞ!」



ユウィネが悪態を吐くとロスエンが前に出た。

それを見て他の人員メンバーも動き出すと対抗する様に魔物たちも動き出した。

停車した三台の馬車の左側。

街道と森の境目付近を戦場にして死闘が始まった。


魔物との戦いは原則“殲滅戦”だ。

先に倒し切るか、こちらが全員殺されるか。

そうである以上、手が負えなくなる前に魔物の数をどれだけ減らせるかが重要となる。



「はぁっ!!」



ユウィネが右手の剣を振り下ろすと迫っていた魔物がその場で停まった。

そして氷の防壁を張り始めた。

今までの個体とは違いだいぶ分厚い氷だ。



(面白い、アタシの火とあんたの氷で勝負と行こうじゃない!)



胸中でそう思いながら彼女は剣に火の属性魔力を込め思い切り振り抜いた。

氷の防壁は粉々に砕け散り、彼女の剣は魔物の身体をも切り裂いた。

魔物は耳障りな悲鳴を発することも無くその場に倒れ込んだ。


直後、倒したばかりの魔物を踏み台にするようにして別の魔物がユウィネに飛び掛かろうとした。

しかし、満足に跳び上がる前に地面に伏した。

風魔力を纏った高速移動でラウシェが魔物の横っ腹を切り裂いたのだ。


二人は目線を合わせるとお互いに“頼りになる”と思いながら頷き合った。



「おるぁっ!!」

「グギエエエエッ!!」

「ふんっ!!」

「グガアアアッ!!」



その調子でしばらく戦闘が続いた。

気づけば五人が押し込んでいたらしく三台の馬車の左前方にまで進んでいた。

三つ目の魔物は数が多かったがレザドなどの他の魔物同様に連携する訳でもなくむしろ五人の連携の前に数を減らしていくだけだった。

数も常時一〇体程度を維持していた為、増える分だけ減らすことが出来ていたことになる。

このまま行けばナジエの矢は尽きるだろうが探索者たちの勝利は間違いないだろう。


彼女たち自身そう思い始めたその時。

辺りに口笛が響いた。

その口笛は緊急事態を報せる時にナジエが鳴らすことになっていたもので、全員の動きが止まった。


そのナジエは矢を放った所だった。

だが、彼女の矢は当たらなかった。

避けられたのではなく標的に叩き落とされたのだ。



「なんだ!?」



ナジエの次にその魔物の姿を捉えたのはロスエンだった。

驚いた様子の彼の視線を追うと辺りで一際大きな木の上にソレはいた。


他の魔物よりも一回り大きい体躯。

ざっくりとした姿形は三つ目の魔物に似ているがその個体は三つ目ではなく四つ目。

そして腕の先にあるのは鋭く長い爪ではなく太く大きな刃になっていた。

まるで鎌の様な腕をしていると言うのが一番しっくり来るかもしれない。



「ギュガアアアアアッ!!」



四つ目の魔物は三つ目の魔物よりも少し高い耳障りな鳴き声を放つと木から降りた。

ドスンという音が聞こえたかと思うと残っていた三つ目の魔物たちが一斉に動いた。

急に雰囲気が変わった様に感じられた。

魔物たちは攻撃して来るのではなく移動しただけだった。

だが、どうも動きが変わった様に見える。

それまで無秩序だった並びがまるで陣形を組んだように思えた。



「ギュルグァッ!!」



四つ目の魔物が今度は短く鳴くと三つ目の魔物がまた一斉に動き出した。

数は全部で一〇体。

通常なら一番近いロスエンとミーベクに殺到する筈。


だが魔物たちは四人を半包囲するかの様に横並びに広がった。

迷いのないその動きに何とも言えない不気味さを感じた。



「なんかやばそうだよ!気を引き締めな!」



四つ目の魔物の出現と三つ目の魔物のそれまでにない動き。

ユウィネが注意を促したが直後に起こった事態に全員が対応出来なかった。



「なっ・・・!?」



あっという間だった。

四つ目の魔物が物凄い速さでロスエンとミーベクに飛び掛かった。

驚きながらも咄嗟に横に避けたロスエンに対してミーベクの反応が遅れた。


ミーベクの小さくとも頑丈な身体に魔物の刃が迫る。

反撃も回避も防御も間に合わないと判断したミーベクは咄嗟に左腕で身を護る様にした。

その左腕と身体に魔力防壁を張って少しでも刃を受け止めようとしたのだ。

防壁なんて勢いを和らげるだけで弾くなんて出来ないが何もしないよりはマシと言った程度に過ぎない。

それでも少しは勢いを削ぐことで腕だけで済めば・・・と言う想いは届かなかった。


魔力の防壁も防具も身体も。

それらすべての頑丈さが無意味と言わんばかりに。

氷魔力を纏い一回り大きくなった四つ目の魔物の刃はミーベクの左腕を斬り落としながら彼の身体にあっさりと深く突き刺さった。



「ミーベクっ!!てめ、ぐぁっ・・・!?」



そんなミーベクを見てロスエンが激昂した。

相棒が殺されたのだから当然の反応だろう。

だが背後から三つ目の魔物に爪を切りつけられた。

そして痛みに仰け反った所へ四つ目の魔物の刃がロスエンを横へ真っ二つに切り裂き、辺りを血で真っ赤に染め上げた。


あっという間に二人。

それも頼もしい仲間が戦闘不能に持ち込まれたんじゃなくて殺された。

その事態に経験豊富な三人の女性探索者たちは、ただ茫然と立ち尽くしていた。

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