能力者ですが、推理も地味にやっています。

こもの作家

プロローグ ベルティアという国


都市ベルティアは秩序と洗練の象徴として、世界の歴史に刻まれている。


古き西洋の面影を色濃く残しながらも、街は最新の技術によって整えられていた。石畳の広場を囲む荘厳な建築物、その屋根には監視ドローンが静かに旋回し、昼夜を問わず人々の動向を見張っている。歴史ある大聖堂のステンドグラスには、デジタル投影された「国家の理想」が映し出され、通りに並ぶ店のガラスには、政府の掲げるスローガンが美しく流れる。


【秩序こそが安寧】


それがベルティアの絶対的な信念だった。


都市の中心部には、国家治安庁がそびえ立つ。純白の巨大な建築はまるで現代の城のように異質であり、そこに住まう者たちは国家の守護者として、市民の安全と秩序を維持することを義務づけられている。彼らは【正義】の名のもとに疑わしき者を排除し、【不確かな存在】を消し去る役割を担う。


だが、この国の本当の秘密は、記録に残ることはない。


ベルティアの法律に『能力者』という単語は存在しない。だが、確かに彼らはいる。政府は能力者を存在しないものとして扱いつつ、特殊規制法の下で管理している。

彼らの起こす事件はすべて隠蔽されるか、あるいは【合理的な説明】で処理される。能力者が関与した事件は、たとえ目撃者がいようとも「そんなことは起こっていない」と報道される。政府の作り替えた事実は人々の耳を渡り、いつしか魔法や怪奇現象として結論の出ない噂話として街に溶けていくだけだった。


しかし、その欺瞞の影で、真実を追う者たちがいた。


表向きはただの探偵事務所。

だが、彼らの目はこの国の「見えざる闇」を暴こうとしている。政府が隠す不可解な事件、存在しないはずの能力者の犯罪——彼らは、それらに挑む数少ない者たちだった。


ベルティアという国は、美しく、完璧で、疑う余地のない秩序に満ちている。



——だが、それは本当に「真実」なのだろうか?


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