第11話 闇の中で芽生えた想い
凛の全身が震えていた。死神の王との壮絶な戦いの最中、彼女は一瞬の隙をついて、ようやくその力を一時的に封じることができた。しかし、代償は大きく、彼女の体は限界に達していた。血が滴り落ち、視界がぼやける。目の前の世界が二重に重なり、彼女は意識を保つのに必死だった。
「凛!」アレクサンダーの声が、彼女の耳に届く。その声には必死さと、抑えきれない恐れが込められていた。
彼女はふらふらと立ち上がり、視線をアレクサンダーに向けた。その顔には、いつも冷徹で理知的な表情が浮かんでいたが、今、その瞳に映る凛には、いつもの冷静さを超えた深い感情が込められているのがわかった。
「アレクサンダー、私は……」凛は声を震わせながら言った。「どうしても、これを止めないといけない。でも、もう限界だよ。」
アレクサンダーは凛に駆け寄ると、彼女を支えながらその手を取った。彼の手は冷たく、力強くて、まるで彼自身の全てがその一握りの手のひらに込められているかのようだった。
「凛、君は一人で戦わなくてもいい。」アレクサンダーの声が、凛の胸に深く響いた。「君の力がもう限界だとしても、僕は君を守る。」
その言葉に、凛の心は大きく揺れた。これまで冷徹で、死後の世界の秩序を守るために戦ってきたアレクサンダーが、今こうして彼女に言葉をかける。その優しさが、彼女の胸に温かく広がり、そして何よりも、その言葉が本当に心からのものだと感じられた。
「アレクサンダー……」凛は少し震えながらも、その瞳を見つめた。「あなたは、どうしてこんなに私に優しいの?」
アレクサンダーは微かに息をつき、そしてしばらく黙ってから言った。「君が、ただの「契約者」だった頃から、君は僕にとって特別な存在だった。君が選んだ道、そしてその決断に対する覚悟を見てきた。そして、君がここまで戦ってきた理由を、ようやく理解した。」
凛はその言葉に胸が締め付けられる思いがした。死後の世界の秩序を守るために生きる者たちと、凛のように世界を守るために戦ってきた者たち。その間に生まれた感情が、今、確かにアレクサンダーと凛の間に芽生えていることを感じた。
だが、その気持ちに向き合うことができるのは、果たして今なのだろうか?戦いの真っ只中で、彼女はその感情を大切にしている暇もなかった。だが、アレクサンダーがここにいてくれることが、何よりも心強かった。
「ありがとう、アレクサンダー。」凛はそっと、彼の手を握り返す。彼女の手のひらは震えていたが、その中に確かな力を感じていた。
その瞬間、周囲の空間が再び歪み、死神たちが現れると同時に、凛とアレクサンダーの間に立ちふさがった。「今度こそ、あなたたちを完全に滅ぼしてやる!」死神たちは怒りを込めて叫んだ。
アレクサンダーは、冷徹な表情に戻り、凛を守るように前に立つ。「これ以上、君に力を使わせるわけにはいかない。」彼は凛に静かに言った。「君の命が尽きてしまう前に、全てを終わらせる。」
「でも、私は……!」凛は言いかけたが、アレクサンダーの目を見て、言葉が止まった。その瞳には、ただの決意ではなく、彼女を守りたいという本能的な想いが溢れていた。
その時、凛は気づいた。アレクサンダーの冷徹さの裏には、彼女を想う気持ちが確かに存在していた。そして、その思いが、今の彼に力を与えているのだと。
「私も、あなたと一緒に戦う。」凛は、決意を込めて言った。「今度こそ、この世界を守るために。」
その言葉とともに、凛は再び力を解放し、アレクサンダーもその力をサポートするように戦った。二人の心が一つになり、かつてないほど強い絆が生まれた。その絆を武器に、二人は死神たちに立ち向かう。
戦いが激化する中で、凛とアレクサンダーの間に育まれた感情は、次第に言葉だけでは表しきれない深さを持ち始めていた。彼女が命を賭けて戦うその姿に、アレクサンダーは全てをかけて守ろうという強い意志を持っていた。
そして、死神たちの暴走が続く中、二人の絆が戦局を変える鍵となることは間違いなかった。しかし、その先に待っているものは、さらに過酷な選択と試練であった。
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