第2話
美女だ。
見渡す限りの美女だ。
株式会社BREEZEは非上場ではあるものの誰もが一度は耳にした事がある有名企業である。前身はコンサル会社であったらしいが、自社でのホテル事業経営を始め、その経営をスマート化するために自社開発した業務管理システムを一般販売したところ大ヒット。今では主力はIT関連ビジネスとなっている。ここはそのBREEZEの秘書室であり、私は本日入社初日の新入社員である。
「はい、まずはこちらの必要書類に記入をして下さい」
そう説明してくれた女性、やはり美女である。そして私と同じく本日入社したと思われる2人の同期・・もちろん美女だ。
(な、なんか場違い感がハンパないんだが・・)
何かの間違いなのでは?同性同名の誰かと間違えられたとか・・。緊張に体を強張らせていた私を気にもとめず、美人の先輩は説明を続ける。そして名刺が手渡された時だった。彼女の表情が変化したのは。
「はい、
彼女はそう手にした書類に目をやり、そしてあからさまに、表情を曇らせた。そして何やらその美貌に複雑そうな苦笑いを浮かべて、私の方に視線を向けたのだ。
「・・
彼女がそう言うと同時に、秘書室がざわついた。
「え・・?」
私が周囲に視線を巡らすと、秘書室の美女達は揃って私に集めていた視線を慌てた様に自らの手元に落とした。
(な・・何?この反応?)
数日後には私は、彼女達のこの異様な反応の理由を理解する事になる。
最上正義はこの会社の立ち上げ時から在籍している古参の職員で、この会社の経営方針を決めている最も重要な部署 " 経営戦略室 " のエースと言われている男だ。その名の通りこの会社最上のブレーンであると言っても過言では無い。そしてこの会社で唯一、管理職でないにも関わらず秘書がついている職員でもある。
誰もが天才、と評するその男に、役職がついていない理由はただ一つ。" 管理職にはあまりにも不向き " であると言う事。
そう、彼はこの会社で最も、パワハラで有名な男であった。彼を担当した職員は軒並み数ヶ月で退職する・・・私はそんな社内一ブラックなポジションに就職してしまったのである・・。
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