平凡村娘と破天荒令嬢の崖っぷち公国再建記
やちまた
幕間の章
夕焼けに染まっていた詩
風に揺れるルピナスの青い花が、夕焼けに染まっている。
大粒の花弁がふっくらと実をつけるように咲き誇っており、それは隣に生えたものもそう。そしてまたその隣に生えたルピナスも。
見渡す限りのルピナスの花畑が、波を作って風を運んでいる。
一人の人物が、その大海原の中に立って夕日を眺めていた。
「 『ひとつは おんに むくいるため』 」
口ずさんだその詩は、彩り豊かに荒涼としたこの場所に染み込んでいくように、風と一緒に、消えていく。
「 『ひとつは かこを あがなうため』 」
かぶったフードからは黒い三つ編みの髪が垂れ下がり、潤った唇から世界に生まれ紡がれた声は、聴く者にまるで中性的な印象を与えることだろう。
「 『ひとつは ししゃを とむらうため』 」
ふいにひときわ、しかしわずかに、強い風が吹いた。
耳に空気のこじれる音がひゅるると鳴っている。
草花がざわめき、それとともに一人の人物も詩を吟ずるを止めた。
そしてその場で振り返った先に、まだ年端もいかない少女が立ちすくんでいた。
「……きれい」
少女は見惚れていたのだった。場所に。時間に。相手に。光に。
この景色のすべてが、少女の目をくぎ付けにする。
「でしょ」
マントについたフードをかぶったその人物が自慢げに言う。
少女は大きくうなずいた。
その日から花畑は、少女のものになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます