第9話:いくら私を口説いても落ちませんから。

そんな訳でファジーロップのおかげで誘拐犯は月に警察に引き渡されて、とり

あえずシナモンへの危機は去った。

そのうち誘拐犯の三バカ大将から闇バイトの首謀者が誰か分かる時が来るだろう。


さて、事件もつつがなく終了して、それからもファジーロップはまるで自分が

お世話になってる屋敷みたいに甲斐甲斐しく働いた。

一番、驚いたのは母親の綺麗さんだった・・何もかもファジーロップがやってくれるので結局綺麗さんはなにもすることがないので昼寝ばかりして5キ太った。


「光太、あなたいっそ、あのメイドさんお嫁にもらいなさいよ」

「とっても働き者でいい子じゃない」


「あのね、俺にはシナモンがいるんだからファジーロップを嫁さんなんかに

もらえる訳ないだろ」

「そんなことしたら奥さんが妊娠してる間によその女をつまみ食いするダメ旦那と

同じレベルになっちゃうだろ」


「あんた、よくそんなこと知ってるわね」

「まあ、うちの流太さんも私があなたを妊娠してた時、危なかったけどね」


そのことは、実はシナモンも心配していた。

光太の家に残したファジーロップ・・・もしかして光太を誘惑しないかって。

でもどっちかって言うと逆かな・・・光太は魔がさしてファジーロップを・・・。


だけどその心配はなかった・・・とも言えなかった。

光太はファジーロップが回し蹴りした時に見えたパンツが忘れられずにいた。

だからファジーロップに興味津々だった。

そんなことで?・・・まったく男はこれだから・・・。


光太はファジーロップに聞いてみた。


「ファジーロップ・・・君って、いつも白いパンツ履いてるの?」


「はい、私は常に純血です・・・だから純白のパンツしか履きません」

「ですから光太様・・・私に下心を抱いても無駄ですよ」

「私は一生涯純血を貫きますから・・・いくら私を口説いても落ちませんから」


そんな訳で光太のファジーロップに対するちょっとした浮気心は終わった。

ちょっとした失恋感覚・・・光太はなぜか切なかった。


光太はファジーロップに適当にあしらわれながらでも、一年間彼女を通じて

毎日シナモンと会話していた。


その日、ファジーロップが言った。


「光太様、もうそろそろ一年が経ちます」

「お嬢様が戻ってこられますよ」


「お〜そうだ・・・もう一年経ったのか・・・経ってみたら早いもんだね」

「待ち遠しいな〜シナモン・・・」


「今週のうちにはお戻りかと・・・」


「ありがとうファジーロップ・・・」


「どうしたしまして」


「あのさ・・・シナモンが帰ってくる前に、せめてでいいんだけど、ハグしてくれないかな?」


「まだ私のこと諦めてないんですか?」


「そうじゃなくて・・・僕一度でいいからメイドさんにハグして欲しかったんだ」

「だってメイドさんだろ?・・・メイドさんの衣装ってハグしたくなるじゃない」

「豊満な胸・・・白くて清潔なフリルのついたメイド服、フワッとしたスカート」

「できたらダイブしたい・・・」

「ファジーロップにダイブしたいけど、せめてメイド服に顔を埋めさせて?」

「シナモンが帰ってきたら、もうそんなこと頼めないから・・・」


「分かりました・・・いいですよ・・・じゃ〜来てください」


光太はファジーロップの柔らかいハグにチビりそうになった。


「あ〜いいわ〜・・・幸せ・・・」


その光景をこれまた母親の綺麗さんが見てしまって、大騒ぎ。


「光太、ファジーロップちゃん・・・あなたたち、やっぱりそういう関係だった

のね?」


「奥様・・・これは違います、誤解です」


「シナモンちゃんがいるって言うのに、あたたたち・・・」

「まあ、だけどそれが男と女よね・・・杓子定規にはいかないのが恋愛よね」


「奥様・・・誤解です」


「ファジーロップ無駄だよ・・・」


つづく。


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